まじないの召喚師3



「なんだ雷地、今更か。俺は初めから気付いていたぞ。筋肉が、文化祭と、神水流家の時と同一人物だとな!」



常磐の台詞に恐怖を覚えた私は、自身の体を抱きしめた。



「ボ、ボクだって。そこに仮面と契約したあやかし二人がいたから分かってたしっ」



柚珠に呼ばれたヨモギ君とマシロ君がテーブルの下に隠れるが、もう遅いし、隠れきれてないし。



「……これでも隠してたんだよ、かわいそうっ……」



響の突然の裏切りに、先輩は彼の胸ぐらを掴み上げる。



「響、お前、ツクヨミノミコトに借りがあったよな。俺たちの味方じゃねぇのかよ」



「………嫌だなぁ、この状況で庇いようがないって」



響が先輩の腕をタプタプたたくと、締め上げが次第に強まる。



「………逆、逆……!」



「まぁまぁ先輩。知られたなら仕方ない」



呆然とする私の身体を使って、ツクヨミノミコトは先輩の肩に手を置く。



「響少年の実験台になるのと、黄泉の国へ行くの、どちらがいい?」



ツクヨミノミコトは、次期当主達に微笑みかけた。



「タケミカヅチ!」



「イワナガヒメ!」



命の危険を感じたらしい彼らは反射的に式神を召喚し、それぞれに武器を構える。



「ふむ………。先輩、響少年を解放して」



先輩は指示通り、胸ぐらから手を離す。

響の口から顔を出していた魂が完全に抜けて、半透明な体でふよふよ浮く。



「私には、死霊術だってお手のものさ」



「なっ!?」



左手で四拍子の指揮をとれば、響の肉体は滅びの歌を発する。

が、それは美しいローレライの歌声とは程遠く、音痴が限界まで喉を酷使した後のように音割れしていた。


これでは本来の効果の1割も出やしない。

黒板を爪で引っ掻くように、ただの不快な音だ。

しかし、彼らの両手は両耳を塞ぐことに使用され、無力化されるという一定の効果はあった。



「………思ったようにはいかないね。これじゃあ脅しになりやしない」



「……僕の歌は、簡単に真似できるものじゃあないんだよ」



魂の状態の響が、天井を漂いながら誇らしげにする。

射程外の私達に、滅びの歌の影響はない。



「もしや、その歌は魂に依存するものかな?」



「………試してみる?」



ツクヨミノミコトは興味深げに魂の響を見ている。

魂の響も満更ではなさそうだ。

このままでは実際に死人が出かねない。


助けてイカネさん。


心の中で祈る。

そして、その願いは届いた。