「なんだ雷地、今更か。俺は初めから気付いていたぞ。筋肉が、文化祭と、神水流家の時と同一人物だとな!」
常磐の台詞に恐怖を覚えた私は、自身の体を抱きしめた。
「ボ、ボクだって。そこに仮面と契約したあやかし二人がいたから分かってたしっ」
柚珠に呼ばれたヨモギ君とマシロ君がテーブルの下に隠れるが、もう遅いし、隠れきれてないし。
「……これでも隠してたんだよ、かわいそうっ……」
響の突然の裏切りに、先輩は彼の胸ぐらを掴み上げる。
「響、お前、ツクヨミノミコトに借りがあったよな。俺たちの味方じゃねぇのかよ」
「………嫌だなぁ、この状況で庇いようがないって」
響が先輩の腕をタプタプたたくと、締め上げが次第に強まる。
「………逆、逆……!」
「まぁまぁ先輩。知られたなら仕方ない」
呆然とする私の身体を使って、ツクヨミノミコトは先輩の肩に手を置く。
「響少年の実験台になるのと、黄泉の国へ行くの、どちらがいい?」
ツクヨミノミコトは、次期当主達に微笑みかけた。
「タケミカヅチ!」
「イワナガヒメ!」
命の危険を感じたらしい彼らは反射的に式神を召喚し、それぞれに武器を構える。
「ふむ………。先輩、響少年を解放して」
先輩は指示通り、胸ぐらから手を離す。
響の口から顔を出していた魂が完全に抜けて、半透明な体でふよふよ浮く。
「私には、死霊術だってお手のものさ」
「なっ!?」
左手で四拍子の指揮をとれば、響の肉体は滅びの歌を発する。
が、それは美しいローレライの歌声とは程遠く、音痴が限界まで喉を酷使した後のように音割れしていた。
これでは本来の効果の1割も出やしない。
黒板を爪で引っ掻くように、ただの不快な音だ。
しかし、彼らの両手は両耳を塞ぐことに使用され、無力化されるという一定の効果はあった。
「………思ったようにはいかないね。これじゃあ脅しになりやしない」
「……僕の歌は、簡単に真似できるものじゃあないんだよ」
魂の状態の響が、天井を漂いながら誇らしげにする。
射程外の私達に、滅びの歌の影響はない。
「もしや、その歌は魂に依存するものかな?」
「………試してみる?」
ツクヨミノミコトは興味深げに魂の響を見ている。
魂の響も満更ではなさそうだ。
このままでは実際に死人が出かねない。
助けてイカネさん。
心の中で祈る。
そして、その願いは届いた。


