「ただいま」
だいぶ涼しくなった月の綺麗な夜、着替えや学校の道具が入ったカバンを両手に。
私、天原月海は自宅の門をくぐる。
「お邪魔します」
「します」
「ます」
私以上の大荷物を担ぐ火宮桜陰先輩と、ヨモギ君とマシロ君を連れて。
「……………はぁ」
「んだよその顔」
「別に」
「俺と一緒で嬉しいだろ、隠さなくてもいいぜ」
戯言は無視して、家の鍵を開けた。
扉を開ければそこは、出て行った時と変わらない我が家がある。
いや、変わらないと言っては語弊が生じるか。
住人は居なくなってしまったのだから。
靴を脱いで、うっすらとホコリのつもる階段を上がる。
「おい、どこ行くんだよ」
「自分の部屋ですよ」
「俺の部屋は?」
「お好きなところにどうぞ。おやすみなさい」
自室に入ると、パジャマに着替えてすぐ、ベッドにもぐった。
久しぶりでここも少しホコリっぽいが、まあいいや。
しばらくは部屋の扉を開け閉めしている音がしていたが、やがて泊まる部屋を決めたのか静かになった。
使い慣れたベッドの寝心地は良い。
すぐに意識が遠くなる。
ついさっきまで暮らしていた火宮の屋敷とはおさらば。
今日からまた、自宅での生活に戻るのだ。