完成した私を見て、咲楽は満足そうに笑う。


「依澄、どう?」
「最高だよ。さすが咲楽」


 暗い気持ちなんて気付けば消えていて、私は自然と笑顔を返すことができた。


 咲楽は私に抱きつき、スマホで写真を撮る。


 その出来栄えに、咲楽から笑顔が消えない。


「ありがとう、咲楽」
「何度でも可愛くしてあげるから、いつでも言って?」


 それは、今日言えなくても気にするなと言っているようだった。


 無理をしなくていい。


 そう思うと、心が軽くなる。


「ありがとう」


 この言葉は、何度言っても足りない気がした。


 でも、さすがに言いすぎたようで、咲楽は照れている。


「全部、私がしてあげたくてしてることだから、気にしないで」


 そして私たちは一緒に家を出た。


 昨日みたいな場面に出くわしてしまわないように、いつもより早い電車に乗り、学校に向かう。


 おかげで、まだ人が少ない時間に到着した。


 私は安心して、教室に入る。


 かなり暇を持て余してしまいそうだと思いながら、カバンから教科書やノートを取り出す。


 それらを机の中に入れようとすると、なにかに引っかかった。


 いつも空にして帰るから、妙だと思いつつ、手探りで入っているものを取り出す。