駄菓子を選びはじめた咲良にそっと聞いた。

「咲良、あのお姉さんの名前、なんていうの?」
「ん? ゆっちゃんだよ」
「本当の名前は、なんていうんだろうな……」
「ゆっちゃんの? 聞いてくるね」

 女の子の名前に興味を持ったのは生まれて初めてだ。そもそも女自体に興味を抱いたことはない。恋愛小説を読んでいても女って面倒くさそうと思うばかり。

「ゆっちゃんの、本当の名前なんていうの?」
「わ、私……?」

 一瞬彼女の言葉が詰まり、俺と目が合う。それから彼女は話を続けた。

「ゆうか。え、えっと、漢字は優しいににおいの香だよ」

 優香か。優しい雰囲気で似合っていると思う。名前を聞けて、満足した。