*蒼視点

 暖かくなってきて、道の雪が解け始めた。学校から一旦家に帰り、ひょう花に向かっていた。

 今も歩きながら、赤井のことを考えてしまう。

 赤井と優香ちゃんが同一人物だと知った日、前に女装した赤井からプレゼントされて、それからずっと大切にしていた、お菓子の空袋、そしてプレゼントが入っていた水色の袋を捨てようと思った。

――でも、捨てられなかった。

 お菓子は食べたから中身はなかったけれど、普段ゴミとして捨てるものでさえ優香ちゃんからもらったものは特別で。

 正体を知ってからもその特別は消えなくて、ずっと特別なままだった。