*優斗視点

「でもね、恋人はいないけど、好きな人はいるかな? ばあちゃんと、あとは……。あ、でも今は恋の好きな人ってことだよね?」
「ばあちゃんか……」

 僕が質問に答えると、高瀬はふんわり微笑んだ。

 恋の好きな人がもしも出来たら、どんな気持ちなんだろうな。ばあちゃんや、人じゃなくて犬だけど、ゆきちゃん。そして離れて住んでる両親に対しての〝好き〟は実際に体験しているからよく分かる。一緒にいると、温かい気持ちになって、幸せでいてほしいなって気持ちになる。

「人って恋心を抱くと、実際どんなふうになるんだろうね」
「恋をすると……相手のことでいつも頭がいっぱいになったり、楽しそうにしているとこっちも嬉しくなったり、自分の好きなものを一緒に好きになってほしくなったり……俺の場合は足湯かな? あとは、一緒にいる時間ごと、彼女の触れたものが全て愛おしくて……」

 自分がリアルで体験しているかのように、優しい表情で話す高瀬。恋心について淡々と軽く何か言うだけかな?ぐらいに思っていたのに。

 ふと呟いたことに対して、こんな具体的で長い返事が来るなんて予想外だった。

「恋をしているの?」
「うん」

 僕の目を真剣に見つめて、高瀬はうなずいた。