近いうちに優香ちゃんと深い話をしようと決めていた。多分、咲良たちはしばらくここに来ない。今しようかな? 

 よし、今あれを訊いてみよう。
 でも、どうやって踏み出そう。

 なかなか最初の一歩を踏み出せず。

「優香ちゃんのリンゴジュース、本当に美味しそうだね」
「うん、搾りたてだからすごく美味しいよ。でも値段が高いから、なかなか自分では頻繁に買えなくて……飲める時がいつも貴重なんだよね」
「そっか、いいね」

 俺はじっと飲んでいる姿を眺めていた。

「あ、飲んでみる? ひとりで飲んでごめんね」

 そう言って優香ちゃんは俺にコップを渡してきた。俺は「ありがとう」とお礼を言い、普通にストローに口をつけて飲んだけど……こ、これって間接……。

「あ、ありがとう。美味しいよ」
「でしょ?」

 優香ちゃんは俺が返したコップを受け取ると、普通に微笑みながらストローでジュースを飲み干した。

 もしかして俺って、全く男として意識されていないのか……。でもあのことを訊いてみて、深い話をしたいって決めたから――。

「……優香ちゃんって、恋人か……好きな人っているの?」

 質問を開始した時点で、このふたりの空間だけが周りとは別の空間になったみたいに、静かになったように感じた。

 返事を訊くまでの時間が長い。

「いないよ」

 いないと訊いて、ほっとした。

「でもね――」

 まだ続きがあるのか?