そう考えていると、白チワワのゆきちゃんが足元に来たから、ふわっと抱っこした。

 この子とは高校受験の日に出会った。朝、受験会場に向かうと、雪が積もっている木の下に小さなダンボールがあった。

 ダンボールの中を覗くと、くりっとした目でずっとこっちを見ていた。暖かい場所に連れていきたかったけど、これから大切な受験だし、連れてはいけない。寒いかなと思い、つけていた茶色のチェックのマフラーをかけた。そして「ごめんね」と謝り、そのまま会場まで行った。

 帰り道、まだダンボールの中にいた。

 捨てられたのかな?

 なんでこんな寒いところに、こんなに小さくて可愛い子を置いて行けるんだろうか。

 犬は抱いたことがない。しかも子犬。壊れないようにそっと抱きしめた。そのまま朝置いていったマフラーにゆきちゃんをくるみ、寒かったねと話しかけて、ちょっと泣きながら家に連れていった。家に帰るとばあちゃんに相談して、ゆきちゃんと一緒に暮らすために必要なことをすぐにした。

 ちなみにこの子の名前の由来は雪みたいな白い毛で、雪の中で出逢い、そして雪みたいに性格もふわふわしてて可愛いから。

 この教科書に書いてあることは人間だけに起こるのかな?

「ゆきちゃんが相手だったら嬉しいね」

 ゆきちゃんは「クゥーン」と返事をした。