それが女装を始めたきっかけだった。暇を見つけてはもっと可愛くなってみたいと、勉強を続けている。

 そうして女装をしてみたら、咲良ちゃんとすぐに仲良くなれた。

***

「お姉ちゃん、これあげるよ」

 咲良ちゃんからグミの当たりマークを預かった。

 赤色でシンプルに小さくカタカナで『アタリ』と書いてあった。

 咲良ちゃんが最近気に入っているアップル味のグミ『ぐみりちゃん』。ピンク色したハートの小さなグミが個包装になっていて、銀色のフタをめくると当たりか何も書いていないかに分かれている。ちなみに僕は、ばあちゃんから何度もこのグミを貰ったことがあるけれど、一度も当たりを出したことはない。

「すごいね、当たりって本当にあったんだ……」
「なぁに? お姉ちゃん知らなかったの? お店の人なのに?」
「うん、最近お店の人になったばっかりだしね。この当たり初めて見た」
「お兄ちゃんも見たことなかったって、今店の前で言ってたよ」
「お兄ちゃん? お兄ちゃんいたっけ?」

――4歳の咲良ちゃんはひとりっ子のはずだけど、どういうことだろうか。

「そこにいるよ」と咲良ちゃんが指さした方向には見覚えのある人がいた。同じクラスの高瀬蒼。

 高瀬……?