「お父さん、一体どういうことなの?」

「京介君は高藤京介という。高藤財閥の御曹司だ。高藤の銀行、商社、保険会社、不動産会社、色んな会社があるが、そこを司る財閥の現総帥の息子だよ」

「ええ!?」

「総帥には許嫁がいたが、政略結婚で性格が合わなかったらしい。総帥は栞を彼女のバイト先の料亭で見初め、卒業間近の大学生だった栞と付き合いだした。親にも内緒で産んだ子供が京介君だ。そのせいで両親と不仲になった。彼の実家から息子の父親の素性を隠すよう言われていたんだ」

「ひどいわ」

「だが、二人は愛し合っていた。正妻に子供が望めなくて、総帥は正式に認知して京介君達を迎えるつもりだった。そのため、彼女を別宅に大切に囲っていたんだ。そして京介君は小学校の時に本宅へ引き取られた。だが、表向き母親は正妻になった。総帥は立場上離婚できず、栞は彼を取られて落胆した」

「可哀想に……」