エイティーンの契約婚

何重ものセキュリティをかいくぐった上階。
神楽坂駅徒歩5分、南向き、耐震免震、浴室乾燥機、食器洗浄機、大型収納、遮音システムなど私のような子供が思いつくような設備は全部揃っているのはもちろんで。

クリーニングやジム、コンシェルジュで荷物受け取りなど普通にはないサービスまであるらしい。

伯父さまが前に『都内のマンションはどこも鶏小屋のように狭い』と言っていたのでそういうものだと思っていたが、中は信じられないくらい広いし、キッチンもお風呂も広々としていた。

驚いたのは……北条君はこの極上の住まいが嫌らしい。

と言うのも、北条君が中学生の時、家を出る代わりに提示されたのがこの家に住むことだったようで……生存確認という監視をされながらイヤイヤ住んでいるのだという。

私としては……こんなところに一時でも暮らせるなんて思ってもいなかったし、やっぱり北条君には感謝しなければいけない。

でも、あの人は私のファーストキスどろぼうだ……。
くちびるの形とか、感触とかがずっとぐるぐる頭を回っている。

やっぱり忘れられないし、受け入れられない……っ。

「ああっ、急がなきゃ……!」

のんびりしている場合ではなかった。
3時間目の生物にはなんとか間に合いたいと、ダッシュで駅に向かう。