『笑っていたら、必ず幸せになれるんだからね。
美桜はずっと笑っていてね』

ママ、パパ。

いつもそう言ってくれてたよね。
私は今も一生懸命生きてるよ。
いつか幸せになれるって信じたいよ。
だから、いつか笑顔でまた会おうね。

「……」

ぼーっと頭が白みがかっている。
視界がゆっくり確かになっていく。

馴染みない部屋、馴染みない寝具。
ここは北条君のおうちだ。

昨夜、北条君と結婚した私は契約通りに彼のマンションに連れられた。
私用に部屋を作ってもらって、お風呂に入らせてもらって、お布団ももらって。
Tシャツも借りて。
(歯磨きセットと下着と靴下だけコンビニで買った)

怒涛の1日に心身ともに疲れ果てていたから、横になったらすぐに眠くなってしまって。

男の子の家で普通に寝てしまった自分に驚くけど、伯父さまの家で8年間鍛えられて神経が図太くなったみたいだ。

それに、婚姻届を書くまで私の名前すら知らなかった北条君の興味のなさが、ある種絶大な安心感を私に与えていた。
この人が私にどうこうしてくることはないだろう……って。