記入済みの婚姻届と戸籍謄本を持って役所に訪れた。どういう要件なのか分からないが、時間外窓口は思いのほか人が並んでいる。対応するスタッフはひとりのようで時間がかかりそうだ。
「次の方」
20分ほど待ってようやく私たちの番になった。
「よろしくお願いします」
私たちが制服を着ているからだろう、届を見てほんの少し目を見開いて驚いた顔をされる。
途中で止められたりするのかなって、なんか言われたりするのかなって思ったけど……やっぱり全然そんなことはなくて。
ちょっと眠そうな顔で『正式に受理されるのは明日ですが、婚姻成立日は今日となります。書類に不備があった際はまた連絡がいきます』と機械的に説明された。
「はい、次の方ぁ〜」
何か考える暇もなく、あっという間に場外に押しやられる。
なんとあっけない。
人生の分岐点なのに、こんなあっけないの?
「……」
なってしまった。
これで既婚者に。
この人の妻に。
なのだけれど、恐ろしいほど実感がない。
「……なんの実感もないな?」
「……私もです」
無言で役所を後にし、数歩。
「えーっと……よろしく?」
「こちらこそ、よろしくお願いします……! 北条さんにはなるべく迷惑かけしないようにしますので……!」
なんだか冷静になって考えると、圧倒的に私の方が迷惑をかける気がして必死に頭を下げた。
「別にお互いさまでしょ?」
軽く笑われたが、今のところお互い様要素がない。この後、ひどい落とし穴でも待っていたりするのだろうか。
けど、義家族ほどの地獄なんて、そうそうない気がする。
「次の方」
20分ほど待ってようやく私たちの番になった。
「よろしくお願いします」
私たちが制服を着ているからだろう、届を見てほんの少し目を見開いて驚いた顔をされる。
途中で止められたりするのかなって、なんか言われたりするのかなって思ったけど……やっぱり全然そんなことはなくて。
ちょっと眠そうな顔で『正式に受理されるのは明日ですが、婚姻成立日は今日となります。書類に不備があった際はまた連絡がいきます』と機械的に説明された。
「はい、次の方ぁ〜」
何か考える暇もなく、あっという間に場外に押しやられる。
なんとあっけない。
人生の分岐点なのに、こんなあっけないの?
「……」
なってしまった。
これで既婚者に。
この人の妻に。
なのだけれど、恐ろしいほど実感がない。
「……なんの実感もないな?」
「……私もです」
無言で役所を後にし、数歩。
「えーっと……よろしく?」
「こちらこそ、よろしくお願いします……! 北条さんにはなるべく迷惑かけしないようにしますので……!」
なんだか冷静になって考えると、圧倒的に私の方が迷惑をかける気がして必死に頭を下げた。
「別にお互いさまでしょ?」
軽く笑われたが、今のところお互い様要素がない。この後、ひどい落とし穴でも待っていたりするのだろうか。
けど、義家族ほどの地獄なんて、そうそうない気がする。