エイティーンの契約婚

「……疑問点は、以上です」
「ん。じゃあ署名して。ここと、ここ……ここも」

言われた通りに名前や住所を記入する。

「割印もね」
「割印……?」

ってなに?

「すみません、全然わからなくて……!」
「いや、そんなの当たり前だし」

複数枚ある書類にまたがって印を押すらしい。

「あっ、印鑑がないんですけど……!」
「手書きでもいいよ。ちなみに婚姻届は印鑑要らなくなったみたい」
「そうなんですか」

契約書の各所に手書きで印鑑ぽく書く。
北条君も同じように書く。

差し出された一冊を、受け取る。

「これで契約書は完成」
「これで……」
「課税文書の場合は印紙がいるんだけど、課税ってわけでもないし、まぁ今回はいいかってことで」
「そうなんですね……」
「じゃあ、改めて合意ということで、婚姻届も記入しよう。俺から書くから」
「……はい」

必要事項を記入する様子を隣から眺める。
やっぱり、素養を感じるきれいな字。

北条君、都内に住んでるんだ。新宿区……お仕事の都合とかもあるし、それもそうか?
となると、私もそこの住人になるんだよね。

「はい」

婚姻届とペンを渡され、私も記入する。

妻になる人、か……。
どこに住んでるのかも今知って、北条君なんてさっき私の名前を知って。
クラスメイトというだけでお互いのこと何も知らないのに、こんなものを書いてる私たち。

もう、不思議すぎる。