エイティーンの契約婚

「この人は金澤さんと言って、共同経営者ってところ。平日の昼間は動けないから代わりに色々やってもらってる。スーパーマンみたいな人」

金澤さんは私の方に向く。

「金澤奨《かなざわ すすむ》と申します。蓮さんと一緒に事業運営をさせていただいております」
「橋田美桜と申します! 北条さんとは同じクラスで――」
「俺の奥さん」
「え?」
「……まだですよ?」

すかさず訂正を入れた。

「じゃあ、ほぼ奥さん」
「蓮さんのほぼ奥様、どうぞよろしくお願いします」

どうぞよろしくって……金澤さんは驚きもしない。
おかしいと思わないの……?
どういうことなのか詳しく理由を聞いたりしないの……?

もしかして、契約結婚って、大人の世界ではよくあることなのかな?
ドラマにもなってるらしいし、世間知らずだな、私。もう少し勉強しなきゃな。

「後ろ乗って」
「……はい」

後部座席、運転席の後ろに座らされる。
隣の北条君はリュックから大きなノートパソコンを取り出し膝に乗せる。

「契約書を清書する」

そう言ってキーボードにタイプを始める。
……恐ろしく速い。機械みたいなスピードで打ち込まれていく。

「雛形があるからすぐに出来るよ」

ずっと画面を見たままでキーボードを見てもいない。

「はい、できた。コンビニで印刷して製本するから。君はその間に戸籍謄本発行して」
「分かりました……」