彼に飛び込むつもりで、えいって飛び降りる。

私は北条君に抱き留められ、ふわっと地面に降ろされた。

抱きしめられた瞬間、圧倒的な力や体格の差を感じて、男の子って凄いんだと。そして絶対受け止めるって、有言実行してくれるんだなって。

「大丈夫?」

それから間近で見る顔が凄くかっこよくて。
モテるのが分かる……とそんな当たり前にそんなことを考えていた。

「ありが……」
「よし! 逃げるぞ!」

お礼を言ってる暇もなく、手を取られて走り出す。
先生側から私たちの姿が見えなくなりそうなところまで走る。

「ここまで来たらもう大丈夫だろ」

たぶん走ったのは数メートル。
軟弱な私は乱れた体を折ってぜいぜいと呼吸を整える。

「おいおい、大丈夫かよ」
「……は……はいっ……」
「もっと運動しろよ!」
「ひゃ……!」

背中を軽くハタかれる。
その時、車道を走っていた車が私たちに向かってベタ付けして、びくっと警戒する。

「あ、これ、俺の迎え」
「え?」

一時停止してハザードをたいた車の運転席から男性が出てくる。
30代前半くらいだろうか、人生の深みが刻まれている大人の男の人。

「お疲れ様です、社長」
「お疲れ様」

スーツの大人の男の人が、制服の学生に慇懃に挨拶をする……たぶん、珍しい光景。

北条君のお仕事の関係の人なのかな。
学校にいる時は高校生だからピンとこないけど、本当に『社長さん』なんだな。