「よし。じゃあ行こうか、今から婚姻届出しに」

口約束ではあるが、契約合意となった私たち。
北条君は早速行動しようとしている。

「こんな時間に役所あいてなくないですか……?」
「時間外窓口があっていつでも出せるんだよ」
「そうなんですか?」
「そう。ちなみに、今マイナンバーカードは持ってる?」
「はい。持ってます」

学生証や保険証ではない、顔写真付きの公的な身分証明書はあった方がいいと、作成した。

「オッケー。それがあれば戸籍謄本がコンビニで請求できる」
「戸籍謄本が要るんですか? コンビニでそんなものが請求できるんですか?」

漫画とかでは婚姻届しか提出してないから、知らなかった。

「本籍地以外で提出する場合は戸籍謄本が要るんだよ。それから最近のコンビニは行政サービスも扱ってる」
「へぇ……」

つまり……今夜にはもうこの人の妻になっているということ……?
今日誕生日で、成人して、即結婚……?
ダメだ……覚悟しても頭がついていかない。

「契約内容に異論はない?」
「はい」
「じゃあ行こう。間をあけたら君の気が変わっちゃうかもしれないし」
「変わりません」

むしろ、北条君の気が変わったら困る。
それくらい私は切羽詰まっている。

「そう? ならよかった」

北条君はそう言って立ち上がり黒板に書いた契約書(仮)をフラッシュ撮影。クリーナーで文字を消し、出入り口に向かう。

私はおずおずと、その背中についていく。