北条君は黒板まで歩きチョークで『結婚契約書』と書いた。その5文字をさっと四角で囲う。
小気味良い音を立てて書かれていくきれいな文字を、私は目を凝らして眺める。
一.甲と乙は高校卒業と同時に離婚する
二.乙は甲の親、親族の前では妻として振る舞う
三.甲は乙に住まいと生活費・学費全額を提供する
四.学校では関係を秘密にする(ただし学校側には報告)
五.互いに好意を抱かない
六.離婚時の慰謝料として甲は乙に一千万円を支払う
チョークを置いて手をぱんぱん払う北条君。
甲と乙とかちんぷんかんだが、文脈的に私が乙で彼が甲ということなのだろう。
「質問は?」
「……はい」
私はすぐに手を上げた。
「今すぐ、住まいと生活費の面倒を見てくれるんですか……!?」
兎にも角にもそれだ。
今すぐじゃないと困る。
「君が今すぐ俺と契約するなら」
今、彼と契約さえすれば、住まいを確保できる……?
「俺が稼いでるのは知ってる?」
「はい。売上がもうウン十億って……」
「そう。それに今できるお金を蓄える方法は全部やっててたっぷり蓄えてる。君の面倒くらい余裕だよ」
「あの、それって」
「もちろんそれは今日から即日で、そして生きてるのか死んでるのかよく分からないギリギリの暮らしをしてもらうのではなくて、健康で文化的で人間らしい、余裕を持った生活をしてもらいたいと思ってる」
小気味良い音を立てて書かれていくきれいな文字を、私は目を凝らして眺める。
一.甲と乙は高校卒業と同時に離婚する
二.乙は甲の親、親族の前では妻として振る舞う
三.甲は乙に住まいと生活費・学費全額を提供する
四.学校では関係を秘密にする(ただし学校側には報告)
五.互いに好意を抱かない
六.離婚時の慰謝料として甲は乙に一千万円を支払う
チョークを置いて手をぱんぱん払う北条君。
甲と乙とかちんぷんかんだが、文脈的に私が乙で彼が甲ということなのだろう。
「質問は?」
「……はい」
私はすぐに手を上げた。
「今すぐ、住まいと生活費の面倒を見てくれるんですか……!?」
兎にも角にもそれだ。
今すぐじゃないと困る。
「君が今すぐ俺と契約するなら」
今、彼と契約さえすれば、住まいを確保できる……?
「俺が稼いでるのは知ってる?」
「はい。売上がもうウン十億って……」
「そう。それに今できるお金を蓄える方法は全部やっててたっぷり蓄えてる。君の面倒くらい余裕だよ」
「あの、それって」
「もちろんそれは今日から即日で、そして生きてるのか死んでるのかよく分からないギリギリの暮らしをしてもらうのではなくて、健康で文化的で人間らしい、余裕を持った生活をしてもらいたいと思ってる」
