エイティーンの契約婚

出入り口に人が立っている気配。

「誰……!?」

その人はスマホを取り出し暗闇を照らす。

「……!」

北条君だった。
聞かれた……。

「な、な、何を……してるんですか……?」
「俺? たまにここに忍び込んでぼーっとしたりしてるんだけど」

だから鍵が開いていたのか……。
そうとも知らず悪口を叫びまくってしまった……。

「言わないでください……! お願いします……!」

私は立ち上がってがばっと頭を下げる。
今言ったこと、舞香ちゃん知られたら面倒になる。きっと学校で嫌がらせをされる。
舞香ちゃんは人気者だから、それくらいできる……。

私はもう、これ以上は傷つきたくない……。

「別に言わないけど」

北条君は私の目の前にある机に腰掛け、言った。

「今日言ったこと覚えてる?」

今日――それはまさかあのプロポーズのこと?
私と、契約結婚がしたい、っていう……。

「あれ……冗談……じゃないんですか……?」
「いいや? 本気だよ?」

薄く微笑みながらも私から視線を逸らさない彼の瞳。嘘をついているようには見えないけれど……。

「……契約、なんですよね? どういう内容ですか……!?」

疑問は山ほどある。
冗談か本気なのかも定かではない。

しかし今の私は、今日明日を生きる術を探さなくてはいけなかった。あの家に帰らなくて済む方法があるなら、食いつかなければいけなかった。