エイティーンの契約婚

「美桜……そんな心配するな」

フローリングの床にへたれ込んでている私の前に伯父さまがしゃがみ込み、ほぼ目線が同じくらいになる。

「これからもこの家に置いてやる。大学だって行きたいなら行かせてやってもいいんだ」
「え……?」

甘みを帯びた声――いきなり抱きしめられぞわっと鳥肌が立った。

「ひっ!?」
「ただしこれからは大人同士の取引だ。意味は分かるな?」

身を捩るが、はぁはぁと荒い耳元に息がかかり気持ち悪い。

「やめてください……っ!」

この人……。
やっぱり、性的な目で私を見ていたんだ……。
今までのあれこれは勘違いじゃないんだ……。
いつかこんなことをしてやろうって思ってたんだ……。

舞香ちゃんと私は同い年なのに……。
そう考えたら吐き気を催すほどの嫌悪感に襲われた。

「美桜……」
「やめてッ!」

力を振り絞って思い切り突き飛ばし、スクールバッグを掴んでリビングを飛び出た。

「行くアテなんかないくせに! お前の居場所はここだぞ!」

そんな言葉を背中で聞きながら全速力で走る。
家から少し離れると、震える手でブレザーのポケットからスマホを取り出した。
ほのぴから『家帰れた〜?』といつもの調子で連絡がきていた。

「ほのぴ……ほのぴ……助けて……!」

縋り付くように電話をかけようとしたところで手を止めた。
ほのぴに連絡してどうするの?

ほのぴは優しいから、家においでって言ってくれたり会いに来たりしてくれるかもしれないけど、こんな時間に迷惑だし、ご両親が心配する……。

ほのぴは普通の家の子なんだよ……。
私とは違うんだよ……。