エイティーンの契約婚

「いいか。横領なんてそうそうできるもんじゃないんだ。会計士の私が言うんだから間違いない」

違う……お金を知り尽くしてる伯父さまだからできるんじゃないの……？
巧妙に巧妙に、時間をかけて、指摘されることもなく……。

「この目録は本当ですか……？ 私が嫌いだから悪い嘘をおっしゃっているのではないですか……！？」

私は縋るように見る。
お願い、お願い、お願い、お願いだから……。
ただの意地悪であってよ……。
嘘って言ってよ……。

だって、両親が遺してくれた大切なお金なんだよ……。
私が幸せになるための、お金……。

「全部現実だよ、美桜」

ニタァとしたおぞましい笑顔を見た瞬間。
膝から力が抜けてその場にへなへなと沈んだ。

「……うそ……」

成人になった私は、この監獄のような家を出て新しい生活を始められる。
惨めな生活は終わらせて、楽しい人生にする。

しかしそれはお金がなければできない。
お金がなければ、私はなにもできない……。

弁護士に相談するとして、争っている間の生活費は……？
家庭裁判所に不正を指摘し伯父さまと断固戦うとして、その間の居場所は……？
そもそも何を根拠に不正と指摘するの……？

私、これからどうやって生きていくの……？
明日の生活そのものが、危うい。

もう、呆然とするしかなかった。