こっそり教室に帰ると、主役不在のそこにはもうすっかり人がおらず。私は自分のスクールバッグを掴んで急いで教室を後にした。

校門のところでほのぴを見つけた。

「美桜!」
「ほのぴ……!」
「ライン既読つかないしここにいたら来るかと思って!!」

ほのぴの顔を見たら安心して泣けてきてしまって思い切り抱きついた。

「ほのぴ……こわかったよ……!」

いま、胸にある率直な感想はそれだった。
いきなりたくさんの人の前で北条君に腕を引っ張られて、あげくとんでもない嘘でからかわれて。

あんなことして今後、目をつけられたらどうするの。
呪われたら責任とってくれるの。

「美桜! さっきはごめんね……!」
「え? なにがっ!?」

ほのぴが急に謝りだした理由がよく分からず首を傾げた。

「美桜も今日誕生日なのにその横で北条北条って! なんかすごいむかついちゃって! 美桜だってずっと2位ですごいのに!」

真っ赤な顔で、涙目になって私に謝るほのぴ。
あの行動は、正義感と優しさからきてるんだよね。

「いいの! ほのぴが言ってくれて嬉しかった! けどやっぱりみんなに祝われるとか恐怖だから、ほのぴが覚えててくれれば私はそれでいいの! 本当に本当にそれでいいの……!」
「美桜……可愛いね、美桜はほんとに」

わしゃわしゃ頭を撫でられる。

「私、何もできないけど。美桜にはさ、世界で一番幸せになってほしい。本当にそう思うの……」
「ほのぴ……」

私の事情を知ってるからそう言ってくれるんだろうな。
ほのぴ……だいすきだよ。