エイティーンの契約婚

男の子に近づく耐性がまっっっったくない。
私は顔を背けた。

「……う……嘘です」
「嘘じゃない。ドッキリでもない。本気で君と結婚したいんだ」

また同じ言葉を真剣に言われた私は溶けそうなくらいしどろもどろになっていく。

「え、お、親の同意とか……」
「成人だから親は関係ない」
「学校には、なんて……」
「校則には書かれてなかったなぁ。異性交友がどうのはあったかもしれないけど」
「それは……屁理屈っていうのでは……」
「お、難しい言葉知ってるのな!」

ぱっと笑う北条君。
気だるそうな雰囲気から突然可愛らしいものに変わる。
ことごとく逃げ道を塞がれて、より一層分からなくなっていく。

なにこれ?
どういうことなの……?
なぜ、私がスターに求婚されてるの……?

「……」

いや、もう普通に考えてあり得ないよね……?
だって絶対この人私のこと知らないでしょ……?

結婚って、お互い大好きでしかたないふたりが、片時も離れたくなくてするもの。
……ないでしょ、普通に。

私、バカにされてるのかな……?
教室すみっこ族だからからかったら面白そうだなって?
それとも、なんか新しい仕事の調査してるとか……?

とにかく今私に分かるのは、これがとんでもない嘘だということだけ。

嘘で人をからかうなんて酷い人だと思う。
私は拳を握り、彼を睨みつける。

「あ、あまりバカにしないでください……! 私、大好きな人がいますから……!」

そう言ってダッシュで逃げた、陸上部の選手もびっくりするような高速で。