エイティーンの契約婚

「えっ、あの……!?」

教室を出て廊下に出る。
歩いている生徒が何事かと振り返るが、おかまいなしに突き進んで行く。
脚がもつれそうになりながら走る……いや、走らされる。

なにこれ、なにこれ、なにこれ――!?

「蓮先輩ー!? どこ行くんですかーっ!?」
「うわっ、なんで追いかけてくんだよ!」

さらに階段を昇り、鬼ごっこをして、たどり着いた果ては静かな図書室。

「……な、な、なんなんですか……っ!?」

走ったせいで息はあがってるし、頭の中はパニックに陥っている。
何故突然スターに引っ張り出されたのか。

「超だりぃ」
「……!?」
「あんなの求めてないし。余計なことやめてほしいわ」

どうやらサプライズ誕生日会が嫌で逃走をはかったらしい。

「しかしそれは……みんな、北条く……北条さんに喜んでほしく……」
「違うね。俺に取り入りたいからじゃない?」

たくさんの人に誕生日を祝われるなんて、まさにスターの運命。幸せ者だと思うけど、度を越すと疲れてしまうのかな……。

「でもだからって、私を巻き込まないでください……私が呪われてしまいます……」
「呪い?」

北条君と関わるとファンの女の子たちからシメられるとか呪われるとか、そういう類の話はよく耳に入ってくる。

それはそうだよ、イケメンでお金まで稼いでるなんて、誰かが独り占めするなんて許されるはずがない。

「北条さんを好きな女の子たちの想いが強い呪いになり、近づいた不届者に不幸を……」
「は? 意味わかんない」

くくっと笑う。
遠目で見る北条君は、大人びているというか、気だるそうというか、いつも塩っぽい雰囲気だったから、そんな風にいたずらっぽく笑うのかと意外に思う。