「まぁ嘘がつけないところが桃子のいいところでもあるよ。多分」
「多分って!フォローするなら言い切ってよ~」
「あと猪突猛進なとこね。いいところでもあり、悪いところでもある」
「うっ」
「恋したかも~、そうとなれば本人に伝えよう~って……。もう猪突猛進超えてイノシシそのものよね」
「イノシシ!?」
「突っ走りすぎ」
さすがにイノシシは、はじめて言われた。
でもたしかに、2人のキスの途中でわざと大きな声を出したり、なかなかヤバい行動を取ったのはたしかだ。
だけどそんなことをしてしまうくらい、黙っていられないくらい、心臓が暴れて仕方なかったんだ。
「……じゃあさ、凪岐くんにキスしてほしいって頼むのも、突っ走りすぎかな?」
意を決してそう言うと、すんごく長い沈黙が流れた。
あれ?ゆりちゃん、聞こえなかったのかな?
だんまりのゆりちゃんの顔を覗き込む。
「………………はい?」
ようやく口を開いたゆりちゃんの表情は、嫌悪感MAXだった。
めちゃくちゃ眉間にしわが寄っている。
「やっぱり直接頼むのはイノシシすぎ?」
「イノシシ気に入るなよ。っていうか、頼む頼まないじゃなくて。キスってあんた……」