アンハッピー・ウエディング〜後編〜

留学…留学ねぇ。寿々花お嬢さんが…。

海外に留学…フランスに…。…ふーん…。

全然ピンと来ない。

俺の生活とはかけ離れたところにある言葉だ。

「悠理君は…どうしたら良いと思う?」

寿々花さんは、縋るように、助けを求めるように俺にそう聞いてきた。

…それは…俺に聞かれても…。

…神様じゃないからな。俺は。

なんと言って寿々花さんを導けば良いのか、なんと助言するのが正解なのか、分からない。

「それは…俺が決めることじゃないだろ?寿々花さんが決めることであって…」

出てきたのは、そんな無責任な言葉だけ。

他にもっと気の利いたことは言えないのか。

寿々花さんはそんな言葉が欲しい訳じゃないだろうに。

「寿々花さんの…将来のことだから。俺は寿々花さんの判断を尊重するよ」

「そう…。そう…だよね。うん…」

「…」

…馬鹿なのか?俺は。

もっと他に…言うことがあるだろう。もっと…。

…でも、それは俺が言って良いことなのか?

許されるのか。そんな…寿々花さんの将来を左右するようなこと。

俺なんかが、俺如きが口を挟んで良いのか。

所詮…寿々花さんの「世話係」に任命されただけの身分で…。

自分にそう言い訳して、俺は自分の言うべきこと、本当に言いたいことから逃げた。

…我ながら卑怯な奴だ。

「俺は…その、寿々花さんがどういう選択をしても…尊重するよ」

「…うん」

寿々花さんは、小さくこくりと頷いた。

ここ数日、自分が避けられていた理由は分かった。

分かったけど…。今では、強引にその理由を知ってしまったことを、後悔していた。

知らなければ…向き合わずにいられただろうに。