…さぁ、どうだ。

当たって砕ける精神のもと、俺は全力でぶち当たったぞ。

あとは盛大に砕けるのを待つのみ。

…砕けたい訳じゃないけどな。

「…悠理君…」

寿々花さんは、身体から力が抜けたのか、それとも隠そうとする気力を失ったのか。

必死に覆い被さって隠していた、書類の束を手から離した。

…結局その書類の束、何なんだ?

ここからじゃよく見えないし、見えたとしても日本語じゃないから読めないんだけど…。

「…悠理君。ごめんね」

…何を言うかと思ったら。

「何に対して謝ってんだ?」

「その…。悠理君に…いっぱい悩ませてしまったこと…」

あぁ、そう。

「悪いと思ってんなら、その理由を教えてもらいたいもんだな」

「…それは…」

「言えないようなことなのか?何で?…誰かに口止めされてるとか?」

「く、口止めなんて…されてないけど」

じゃあ何だよ。

「言ったら俺を傷つけるから、とか?」

「…そ、そうじゃなくて…」

「…何だよ?」

「言ったら…私が傷つくと思って…」

…これは予想外だった。

自分かよ。

「何で寿々花さんが傷つくんだよ。誰だ?あんたを傷つける真似をする馬鹿は」

「…悠理君かな…」

「…俺かよ…」

え、何?全部俺のせい?俺のせいなんですか?

身に覚えねぇなー…。

「俺は寿々花さんに何をしてしまったんだ?」

「そ、それは、その…」

「で、その書類は一体何なんだよ?ちょっと見せてくれ」

「あぁっ…」

俺は、強引に寿々花さんの手元の書類を一部、手に取った。

止めようとしたが、もう遅い。

え、強引?

非常事態に付き、合法。

紙切れを取り上げて見たところ、それは紙切れと言うより、薄い冊子になったパンフレットだった。

…何だこれ?

書いてある文字が全部アルファベットで、しかも英語ですらないから全然読めない。

けど、パンフレットの表紙に大きく載ってる写真。

この写真の建物…。なんか…学校?みたいな…。

外国の学校なんて見たことないから、はっきりとは言えないけど…。

「…ん?」

パンフレットの間に挟まっていた白い紙切れが、ひらひらと床に落ちた。

こちらもくちゃくちゃに丸められて、皺だらけになっているが…。

よくよく皺を伸ばして開いてみると、こちらは日本語の書類だった。

えぇっと…。何々…?

「フランス…。留学プログラム…。長期滞在…?」

「あ、あわわわわ…」

目が点になる、とはこういう時のことを言うんだろうな。