…ともあれ。

週末は雛堂達と出掛けるって、寿々花さんに言っとかないとな。

まさか「行くな」とは言わないと思うけど…。




「寿々花さん、ちょっと」

「ふんふんふーん♪ゆーりくんと〜。くりぷら〜♪」

俺が話しかけたことにも気づかず、寿々花さんは先日一緒に撮ったプリクラを、リビングの壁時計にくっつけていた。

おい。話を聞けって。

あと、くりぷらじゃなくてプリクラな。プリクラ。

それからついでに、その辺に貼るんじゃない。

つい二日前も、いつの間にか冷蔵庫の扉の内側にプリクラが貼られていて。

朝、お弁当を作る時に冷蔵庫を開けた瞬間、目からビームを発射する自分を見つけて、俺はびっくりして手に持っていた卵を落とした。

あの卵は本当に勿体ないことをした。

卵まみれの床を掃除してから、何でこんなところにプリクラを貼り付けてんのかと、寿々花さんに説教したが。

寿々花さんは何が悪いのかさっぱり分かってなかったようで、首を傾げてぽやーんとしていた。

あんた、その顔をすれば誤魔化せると思ったるだろ。

ったく、何がしたいんだか。このお嬢様は…。

…それよりも。

「おい、こら。話を聞け」
 
「はっ!脳内に直接、悠理君の声…!?」

「ふざけんな。普通に耳で聞こえてるだろ」

乙無じゃないんだから。脳内で会話すな。

「あ、悠理君だ。どうしたのー?」

ようやく、俺が話しかけていることに気づいたようだ。

おせーよ。

「今度の週末、俺、出掛けるから」

「…!」

「家に居ないから。留守番しててもらえるか?」

寿々花さんにそう頼むと、彼女はじー、っと無言でこちらを見つめた。

な、何だよ?

なんか不味かったか?

「え、えっと…?」

「…何処に行くの?家出…?」

「…雛堂達と遊びに行くだけだよ」

「そっかー…」

仮に家出だとしたら、わざわざ宣言していかねーよ。

黙って行くわ。

って、家出なんてしないけど。

「何処に遊びに行くの?」

「さぁ、俺にもよく分からん。なんかお洒落なカフェがどうのって言ってたな…」

「…そっかー…」

「…」

いまいちはっきりしない返事…と言うか。

…ちょっと落ち込んでるようにも見える。

「…えっと、なんか駄目だったか?やりたいことでもあった?」

「えっ…」

「もし用事があるなら、雛堂達に頼んでまた別の日にしてもらうから。遠慮なく言ってくれ」

寿々花さんの予定の方が優先に決まってるからな。

何なら、来月の春休みまで待っても良いんだし。

どうせ雛堂も乙無も、毎日暇してるだろうからな。

俺も人のこと言えないけど。

「ううん…。そうじゃなくて…」

「…そうじゃなくて?」

「悠理君とお出掛けかー。羨ましいな…。…悠理君が居ないの寂しいな…」

寿々花さんは俺に聞こえないくらい小さな声で、ボソボソと呟いていた。

…?

ちょっと、よく聞こえなかったんだが…。もう少し大きな声で言ってくれないか。