アンハッピー・ウエディング〜後編〜

寿々花さんにレポートの小冊子を見せてもらった、その翌日のこと。

「はぁー。つらたん。つらたにえんの無理茶漬けだわー」

雛堂が、だらしなく机にベターっと突っ伏していた。

…つらたにえん?

無理茶漬け?

何言ってんのか知らないけど、何となく意味合いは分かる。

関わったら面倒臭いから、放っとけってことだな。

しかし、お茶漬けかー。たまには朝ご飯、お茶漬けにしてみても良いかな。

すると。

「ちょっと、こら!悠理兄さん!お友達が落ち込んでるんだぞ?スルーしようとするんじゃねー」

構ってちゃんモードの雛堂が、俺を名指しで呼んできた。

いや、だって絶対面倒臭いことだから、こういうのは無視しておくに限ると思って。

「大也さんの悩みなんて、所詮大したことないですからね。つまらないものですよ、人間の悩みなんて」

乙無が、ばっさりと切り捨てるように言った。

まるで俺の心のうちを見透かしたようだ。

「何だと?悩んでる人にとって、それが夕飯の献立についてだろうと、深刻な悩みであることに違いねーんだよ!」

雛堂が言い返した。

うん。まぁ夕飯の献立を考えるのは大変だもんな。

雛堂の言うことにも一理ある。

「へぇ。じゃあ大也さんの深刻な悩みって何ですか?」

「そんなの決まってるだろ。もうすぐあの季節だからだよ!」

…あの季節?

俺と乙無は、揃って首を傾げた。

…どの季節?

あ、期末試験とか?

すると、雛堂は俺と乙無の間に割って入った。

「おい、真珠兄さん。悠理兄さんに近寄っちゃ駄目だぞ。悠理兄さんは敵だからな」

は?

何故か雛堂は、敵意丸出しでこちらを睨んでいた。

…ついさっきまで、お友達がどうとか言ってなかった?

今は敵なのか?

「俺、あんたに何かしたっけ?」

「うるせー。このリア充め!貴様のようなリア充には、自分ら非モテが味わう苦痛なんて、想像も出来ないだろうよ!」

「…」

ごめん。マジで意味分かんねぇわ。

とにかく、雛堂が俺を敵視していることはよく分かる。

…まぁ良いや。

多分、二、三日もしたら機嫌、治るだろ。

ほっとこ。

と、思ったら、乙無が。

「あぁ。なんだか分かりました。…もしかして、バレンタインのことですか」

「そう!それだよ。つーかそれ以外の何だと思ってたんだよ?」

雛堂が、激しく同意した。

…は?バレンタイン?

乙無の口からその言葉を聞いて初めて、そういやもうすぐそんな時期だな、と思い出した。