余程疲れていたのだろう。

寿々花さんが起きてきたのは、午後遅くになってからだった。

「悠理くーん…おはよ〜…」

「あぁ、おはよう…。もう昼過ぎてるけど」

昼夜逆転してるから、寿々花さんにとっては今が朝みたいなもんなんだろうな。

「何か食べる?甘いものの方が良いか?」

「うん、食べるー」

とのこと。

良かった。じゃあ、さっき作っておいたアレを、焼いて出すとしようか。

「ちょっと待っててくれ。今準備するから」

俺は寿々花さんにそう言って、すぐに軽食の用意をした。

頭を使い過ぎて、糖分を欲しているであろうと思って。

「はい、おまちどおさま」

「わー。フレンチトーストだー」

これには、寿々花さんも目をキラキラさせて大歓喜。

普通のトーストも美味しいけど、フレンチトーストだと更にテンション上がるよな。俺だけ?

寿々花さんが寝てる間に、卵液に食パンを浸して、準備しておいたのだ。

それを軽く焼いて、粉砂糖とメープルシロップをたっぷりとかけ。

熱くて甘いホットココアを添えて、寿々花さんに出した。

今日のおやつは甘々だな。

良いんだよ、今日は特別。

寿々花さん頑張ってたし。頭もたくさん使ったからな。

「もぐもぐ…」

「美味しいか?」

「うん、美味しいー」

そうか。それは良かった。

その緩みきった、雲の上をふわふわ歩いているような満面の笑みを見れば分かるよ。

作っておいて良かった。

自家製フレンチトーストくらいで、こんなに喜ぶとは…。

何を作っても、作り甲斐のある人だよ。本当に。

「はー、美味しかった。ご馳走さまー」

「はい、お粗末様でした」

寿々花さんはあっという間に、ぺろりとフレンチトーストを平らげた。

これで、脳みそに糖分を補給出来たか?

「もうひと頑張りなんだろ?レポート」

「うん、あとちょっとー」

寿々花さんなら、何も心配要らないだろうが…。

それに、もうほぼ完成してるようなものだから、今更だけど。

「俺に出来ることがあったら、なんでも言ってくれよ」

我ながら、何とも偉そうに。

寿々花さんみたいに、立派なレポートなんて書けない癖にな。

しかし寿々花さんは、思い上がった俺を嘲笑うことはなく。

「大丈夫だよ。あとちょっとだから…ささーっと書いちゃおう」

ささーっと感覚でレポート書ける寿々花さん、さすがである。

「悠理君に美味しいフレンチトースト食べさせてもらったし、それにさっきお昼寝してる時、面白い夢を見たから、今絶好調なんだー」

へぇ。それは良かったな。

一昼夜かけて、レポート19枚も書いてるんだから、昨日も充分絶好調だったと思うけどな。

「どんな夢だったんだ?」

「竜になって、異世界で戦ってる夢」

ファンタジーだなぁ。

「あのね、心臓が7つあってね、真っ赤なルビーみたいな石なんだー」

「はいはい…。そりゃ面白い夢を見たな」

「うん!楽しかったなー」

一度で良いから、俺もそんな楽しそうな夢を見てみたいもんだよ。

…って、竜になる夢って、そんなに面白いか…?