アンハッピー・ウエディング〜後編〜

ふーん。ここがキノコ博物館…。

見た目は普通の…ちょっとこじんまりした博物館にしか見えないな。

しかし、確かに施設の前に、大きく書いてある。

『見聞広がるワールド キノコ博物館にようこそ』と。

やっぱり間違いではなかったようだ。

今から施設に入ろうなんて、俺は正気か…?

それなのに、俺の内心の葛藤も知らず。

「よーし、悠理君。入ろー」

寿々花さんは、うきうきわくわくと急かしてくる。

元気いっぱいじゃないかよ。

分かったよ。覚悟を決めるよ。

「どんなキノコがあるな?楽しみだねー」

キノコ食べられない癖に?

見る分には良いのか。食べるのは嫌でも。

「…良いか、純粋に楽しむのも良いが、レポートの為に来たんだってことを忘れるなよ。ちゃんとメモを取りながら…」

「わーい。キノコいっぱい〜」

「おい、話を聞けって」

それから、一人で勝手に入るんじゃない。迷子になるぞ。

俺は寿々花さんに続いて、キノコ博物館に入館。

あぁ…入っちゃった。

こんな施設、一体誰が来るんだと思っていたが。

キノコ博物館の中は、意外なほどに、本当に意外なほどに、人が多く集まっていた。

…マジで?

この人達、全員、正気か?

いくら、まだ開館したばかりとはいえ…。

「わー。たくさんお客さんいるねー」

「あぁ…。わざわざキノコを見に来る物好きが、こんなにいるなんて…。全員、正気の沙汰とは思えないな」

俺も含めてな。

しかも、ひときわ大きな声で興奮している者もいた。

「はぁ、はぁ。これが念願のキノコ博物館…!右を見ても左を見ても、キノコでいっぱい…!ここは楽園、楽園なんですか?」

「四季(しき)、目立ってるから。ちょっと落ち着け。声を小さく…」

「はっ!これは僕がずっと探し求めていたキノコ…!これがあれば、朝陽(あさひ)さんをチョメチョメする薬の調合が…!」

「おい。今度は俺に何をするつもりだ。いい加減正気に戻れって!」

…などと、言い合っている二人組を発見。

片方は正気のようだが、もう片方は涎を垂らさんばかりに、キノコが展示されたガラスのショーケースにへばりついて動かない。

あれはやべぇ奴だ。…キノコガチ勢だ。

「あの人、きっととってもキノコが好きなんだろうねー」

「しっ、寿々花さん。見ちゃいけません」

ああいう怪しい輩には、近寄らないのが一番だ。

近寄らんでおこう。

爬虫類の館の時と言い、深海魚水族館の時と言い、この「見聞広がるワールド」の施設は、変人率が高過ぎる。

…え?あんたらも同じ施設に来てるんだから、変人の一人だろうって?

…は?

「それより、順路を回ってキノコを見ていくぞ」

「うん。どんなキノコがあるかなー」

どうだろうな…。

俺の知ってるキノコと言えば、シイタケやシメジやエリンギだが…。

きっとこの博物館には、スーパーで売られているキノコ…どころじゃない、たくさんの種類のキノコが展示されているのだろう。

それじゃ、順番に見ていこうか。