その後20分くらいかけて、ゆっくりと寿々花さんに事情を説明し。

結果。

「なーんだ…。悠理君、キノコで興奮する変わった趣味の人なのかと思ったよー」

「…んな訳ねーだろ…」

何とか、寿々花さんの誤解を解くことに成功。

危ないところだった。途中、3回くらい心折れかけたし。

これ俺の趣味じゃねーから。雛堂に無理矢理、寿々花さんの分も押し付けられただけだから!と。

何度も何度も繰り返して、ようやく分かってもらえた。

生きた心地がしなかったよ。

「…で、それで雛堂からもらったから…。これ、片方寿々花さんにあげるよ…」

えーと、ポルチーニだっけ。寿々花さんに渡すよう頼まれたのは。

要らなかったら、無理して受け取る必要はないぞ。

その時は段ボール箱に詰めて、押し入れに…。

と、思ったが。

「わーい。ふかふかー」

寿々花さんは、思いの外素直にクッションを受け取った。

気持ち悪い、とか触りたくない、と言われることも覚悟していたのに。

それどころか、ポルチーニクッションを抱き締めてもふもふしている。

…意外と好評?

「寿々花さん、キノコ嫌いじゃなかった?」

「ふぇ?うん」

「じゃあ、それ…気持ち悪くないのか?キノコのクッション…」

「何で気持ち悪いの?キノコの絵が描いてあるだけで、本物のキノコじゃないのに」

それはまぁ…そうなんだけど。

坊主憎けりゃ、袈裟まで憎いって言うし。

キノコ嫌いなら、キノコのクッションも嫌いかと…。

「キノコの匂いしないし、ぶよぶよした触感もないし、キノコなのにキノコじゃないみたいだねー」

そりゃまぁ、キノコじゃないからな。

「ふかふかー。ふわふわ〜」

もっふもっふ、とポルチーニクッションを抱き締めていらっしゃる。

…まさかの好評。

成程、キノコの匂いと食感、それから味が嫌いなだけで。

デザインって言うか、見た目は別に良いんだな。

ましてや寿々花さん、抱きまくらとかクッションとか、ふわふわしたもの好きだから。

普通の人ならぎょっとするに違いない、リアルポルチーニクッションでも。

寿々花さんにとっては、意外と嬉しいプレゼントだったのかもしれない。

…なんならマイタケもあるけど、要るか?

良かったな、雛堂。命拾いして。

思いの外寿々花さんが喜んでくれたから、今回は先生への密告は勘弁してやるよ。

むしろ、奇妙奇天烈なプレゼントに感謝しなければならない。