アンハッピー・ウエディング〜後編〜

しかし、確かめてみないことには分からない。

「…寿々花さん、つかぬことを聞くんだが」

「うん。なーに?」

「夕ご飯の準備って…何をやったんだ?」

出前を頼みました、とか?

それだったら、最高に安全。

でも、そうじゃないのだとしたら…寿々花さんの手料理なのだとしたら、その時は…。

「ピザだよー」

とのこと。

成程。ピザ美味しいよな。

でも。

「それは…あれか。宅配のピザ…?」

「?ううん。私が作ったんだー」

地雷の香り。

そのピザってさ…。消し炭が乗ってたりしないよな…?

それにしては…焦げ臭い匂いはしないのだが…。

「ピザの材料なんて…うちにあったっけ?」

募る不安。

こうなったら、百聞は一見にしかず。

俺は恐る恐る、そっと、キッチンの方を向いた。

そこにあるはずだ。寿々花さんが作った、地雷臭たっぷりの手作りピザが…。

キッチンのテーブルの上に大皿があって、そこにほかほかと湯気を立てる食べ物が置いてあった。

普通に、めっちゃ良い匂いなんだけど。

…何だと?寿々花さんの手作りなのに、怪しい匂いが一切しない?

これは一体、どういうことだ?

しかもよく見たら、このピザの生地って…。小麦粉で作る、一般的なピザ生地じゃなくて…。

「…寿々花さん、これ何のピザ?」

「インスタントラーメンのピザだよ。アレンジ料理なんだー」

それを聞いた瞬間、俺は思いっきりガッツポーズをしたくなった。

俺の勝ち。大勝利。

そう、確かにうちの寿々花お嬢さんは、壊滅的に料理が下手だ。それはもう、台所ごと爆破する腕前。

しかし、例外はある。

インスタントラーメンを材料に、インスタントラーメンのアレンジ料理を作る時は。

その時だけは、何故かプロ顔負けの料理を作るのだ。
 
思い出してみると良い。俺が風邪を引いて寝込んだ時、寿々花さんが作ってくれたインスタントラーメンのアレンジおじやを。

あれ、めっちゃ美味しかったからな。

そして今、俺の目の前にあるピザ。

何の生地だろうと思っていたが、よくよく見たら、これ、ラーメンの麺だわ。

一見しただけじゃ、詳しい作り方までは分からないが。

どうやら、麺を茹でて丸く形成して、その上に具材を乗せてるみたいだ。

成程、インスタントラーメンのアレンジピザ…。そういうことね。考えたもんだな。

俺にはない発想だった。

でも、普通に良い匂いだし、普通に美味しそう。

「そうか…。寿々花さんお得意の、インスタントラーメンレシピか…」

「うん。自分で考えたレシピなんだー」

そうか。それはすげぇよ。

長年、色んな種類のインスタントラーメンを食べつけている寿々花さんだからこそ、思いつくレシピなんだろうな。

「食べる?悠理君。食べてくれる?」

「あぁ…。折角だし、もらうよ」

これなら、食べても危ないってことはないだろう。

何度も言うけど、匂いからしてめっちゃ美味しそうだし。

寿々花さんお手製のインスタントラーメンピザを、包丁で切り分けてお皿に盛る。

ピザにはコーラを合わせて、と行きたいところだが…。寒いので、飲み物は熱いお茶で妥協して。

いざ、実食。