アンハッピー・ウエディング〜後編〜

寿々花さんの静かな決意も知らず、俺は自分の部屋に帰り。

制服を着替えて私服に戻るなり、ベッドにばたんきゅー。

ちょっと寝るよ。…30分くらい。

それくらい寝たら、少しは体力回復してるだろう。

そう思って、俺は横になって目を閉じた。

この時の俺の過ちは、ちゃんと目覚まし時計、あるいはキッチンタイマーをセットしておかなかったことである。

お陰で、30分寝るつもりが。

気がついた時には、2時間近く経過していた。

起きて、時計を見てびっくり仰天。

寝過ぎだよ、馬鹿。

「やべっ…!」

俺は慌てて、急いで飛び起きた。 

夕飯の時間までには起きるって言ったのに、思いっきり寝過ごしてるじゃん。

急いで自室を出てリビングに向かうと、そこには。

「寿々花さん、ごめん。寝過ごし…、」

「あ、悠理君。おはよー」

リビングで、お絵描き中の寿々花さんを発見。

「ごめん。めっちゃ寝過ごした」

「ううん。何だかすごーくぐっすり寝てたから、起こすの可哀想で」

「そ、そうか…。ごめんな」

…ん?

ってことはつまり、起こそうとしたのか?

俺の部屋に入ってきて?…マジで?

全然気づかなかったんだけど…?

いや、違うな。きっと部屋をノックして起こそうとしてくれただけだよ。

いくら一緒に住んでるとはいえ、男の部屋に勝手に入るのは、寿々花さんでもさすがに…。

「…で、今日は寿々花さん、それ、何描いてるんだ?」

何、とは寿々花さんの手元のスケッチブックである。

クレヨンをせっせと動かして、今日は何を描いっ、

「さっき見たの。お昼寝中の悠理君の似顔絵ー」

描くな。そんなもの。

絶対間抜け面をしていたに違いない。そんなものを書き残すんじゃない。

つーか、やっぱり部屋に入ってきてたのかよ。

そういや、あんたはそういう人だったな。ノックもなしに他人の部屋に入って…。

そりゃここはあんたの家だから、好きな場所に好きなように入れば良いけど。それは分かるけど。

「でもな、寿々花さん…。あのな、俺はまだしも、男の部屋に不用意に入るもんじゃ…」

「悠理君の寝顔ー♪ぐーすぴー♪」

全然話聞いてないし。

つーか、だから描くなって。やめろ。

「はぁ…」

昼寝のお陰で体力は回復したけど、今度は別の意味で溜め息が出る。

…って、そんなことしてる場合じゃないんだった。

「ちょっと待っててな。夕飯、今から…」

作るから、と言おうとしたが。

「あ、夕ご飯なら、さっき私が作ったんだよ」

「…!!」

何だと。

とんでもないことを聞いたとばかりに、俺はしゅばっ、と振り向いた。

そ、そういえば…さっきから、何やら料理の匂いが漂っているような気がしていたんだ。

「悠理君、疲れてるみたいだったから。たまには私が頑張ろーって思って」

ありがとう。その気遣い、心遣いは大変嬉しい。

でも…でも寿々花さんの手料理と言えば、教室を軽く爆破するくらいの…。

うちのキッチン、無事だよな?半壊どころか全壊してないよな?

いや、さすがにそれは大丈夫か。だって、いくら疲れて爆睡していても、キッチンが爆破されたらさすがに気づくはず…。

それに…料理らしき匂いはするけど、異臭はしない…ような?