アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「悠理君。あったよー」

寿々花さんが、プリント片手に戻ってきた。

「ちょっと、ちょっと見せてくれ」

「はい、どうぞー」

寿々花さんからプリントを毟り取るようにして、食い入るようにそれを見つめた。

すると、案の定。思った通り。

女子部の三学期初日は、週明けの1月9日になっていた。

そして、男子部女子部共に、その日が始業式。

ほら。やっぱり。

つまり、男子部だけ4日から登校で、女子部の生徒は8日まで休みってことだ。

信じられるか?冬休みの長さに男女で差をつけるなんて。

寿々花さんがこうしてプリントを見せてくれなかったら、永遠に気づかないところだった。

それとも何か。印刷ミスか?

男子部も9日から冬休み明けなのに、間違えて4日にしてしまった、とか?

…んな訳…。

分からん。分からんけど、男子部の予定表には今日から学校だって書いてあるんだから。

印刷ミスの間違いにせよ、とりあえず一旦は登校せざるを得ない。

間違いだったら、そのまま尻尾を巻いて帰ってくるしかない。

「そうだったのか…。女子部は来週から…」

それで寿々花さん、今日も冬休みなもんだから、のんびりしてたんだな。

「ごめん。そうとも知らず…」

「ううん、大丈夫だよー。…それより悠理君、時間は平気なの?」

…はっ!

時計を見て、それからサーッと青くなった。

予定表の確認とかしてて、相当時間が経ってしまっている。

間に合うか?新学期早々遅刻か?

いや、今日本当に新学期なのか?分からん。

と、とにかく…食べられるだけ朝飯をかき込んで、学校まで走るしかない。

あぁ、もう皿洗ってる時間ない。

「寿々花さん、ごめん。食器はシンクに積んどいてくれ。決して自分で皿洗いしようなんて、」

「任せて悠理君。私がピッカピカにお皿を洗っ、」

「決して自分で皿洗いしようなんて気は起こすなよ…!?」

「…ちぇー…」

俺がいない間に、皿洗いの為とはいえ、このお嬢様を台所に立たせてみろ。

皿を割るくらいなら良い。

そのせいで怪我をしたら、目も当てられないからな。

頼むから、そのまま放置しておいてくれ。帰ってから俺が洗うから。

「あと、今日から新学期だと思って、寿々花さんの分もお弁当作っちゃったから…。これ、昼にでも食べてくれ」

渾身の、肉巻きお餅弁当である。

休みの日まで、貧乏臭い手作り弁当なんて食べたくない、と言われたら悲しいが…。

「わーい。お休みの日なのに悠理君のお弁当が食べられるなんて、幸せだねー」

勿論、寿々花さんがそんなことを言うはずがなく。

良かった。

「良いか、予定表のミスだったらすぐに戻ってくるから。俺が帰るまで良い子に、大人しくしてるんだぞ」

「アイスクリーム屋さんごっこしてても良い?」

「良いよ」

「やったー」

去年のクリスマスに、俺がプレゼントした奴な。

あれ、結構気に入ってくれたらしくてさ。

最近、よくあれで遊んでいる。

俺がいなくても、大人しく遊んでいてくれることだろう。

「それじゃ、行ってくる」

「いってらっしゃーい」

玄関までやって来て、ひらひらと手を振る寿々花さんに見送られ。

新学期早々、俺はダッシュで学校に向かった。