アンハッピー・ウエディング〜後編〜

こうなるから、おみくじは気が進まなかったんだよ。

新年早々、何でたった百円のおみくじで、ここまで扱き下ろされなきゃいけないんだよ。

俺…今年、死ぬのか…?

…あぁ。気にしないようにしよう。

「はぁ…」

幸先が悪い、とはこのことである。

「…寿々花さんは?どうだった?」

これ以上見ていたくないので、自分のおみくじを折り畳みながら。

俺は、傍らにいる寿々花さんに聞いてみた。

寿々花さんは、じー、とおみくじを見つめていた。

予想するよ。寿々花さんのことだから、きっと大吉なんだろ?

知ってる知ってる。で、「凶」を引いた俺を慰めてくれるんだよ。

いつものパターンじゃん。

「あんたのことだから、大吉なんだろ?」

「…これ」

寿々花さんは、ぺらっ、とおみくじを俺に見せてくれた。

お。見ても良いのか。じゃあ遠慮なく…。

寿々花さんのおみくじを覗き込むと、そこには俺が予想していた「大吉」…ではなく。

「大凶」だった。

…えっ。

思わず、一瞬時が止まった。

マジで?大吉じゃなくて?凶?大凶なのか?

驚いて二度、三度と見直すけれど、やっぱり間違っていなかった。

…本当に大凶だ。

…大凶って、存在するんだな。さすがに俺も、大凶なんて見たことがなかった。

それなのに、寿々花さんは。

「これなぁに?凄いの?」

知らないのか。大凶。

「悠理君とどう違うの?悠理君もこれ?」

「いや…。俺のは凶だけど…」

「ほんと?悠理君のは凶…。私はそれに『大きい』までついてるから、きっと凄くレアなんだね!」

物凄くポジティブな解釈。

確かにレアだけど。大凶なんて、ある意味大吉よりレアだけど。

でも、それは決して良い意味ではなく…。

残念ながら…。

「…一番悪いって意味なんだよ。実は…」

「えっ。これって悪いの?」

星座占いだったら、12位ってところだ。

大吉ならたくさん聞いたことあるけど、大凶は聞いたことない。

さすがの寿々花さんも、これにはショックを受けるんじゃないだろうか。

おのれ、おみくじごときが、うちの寿々花さんを落ち込ませるような真似を。

この場に座り込んで、またずーん、と沈み込んでしまったらどうしてくれるんだ。

「だ、大丈夫だ、寿々花さん。所詮百円の占いだから。こんなの当てにしなくても、」

「今一番悪いってことは、これからは良くなる一方だってことだよね?やったー」

寿々花さん、全然落ち込んでいなかった。

それどころか、非常に前向きな解釈。

鋼のメンタルかよ。

「ま、まぁ、そういう解釈も出来るかもしれないけど…」

何にせよ、落ち込まなくて良かった。

危ないところだった。