アンハッピー・ウエディング〜後編〜

スイーツビュッフェは堪能したし、クリスマスツリーは見たし、イルミネーションも見たし。

こんなにクリスマスを満喫したのって、一体何年ぶりだろうか。

ここ数年のクリスマスは、精々クリスマスケーキを食べるくらいで、毎年冬休みの宿題に明け暮れていたような気がする。

丁度クリスマスの時期って、冬休みが始まる頃と被ってるんだよ。あれ、嫌がらせみたいだよな。

でも、俺としては助かるよ。

クリスマスに何の予定もなくても、「いや、冬休みの宿題があるから」で誤魔化せるからさ。

…え?クリぼっちの言い訳?

…は?

宿題やってるんだから立派なもんだろ。

それに、ほら。今年はクリぼっちじゃないぞ。

高級ホテルのレストランで、スイーツビュッフェと洒落込んだからな。

小粋なクリスマスプレゼントを送ってくれた、椿姫お嬢様に感謝。

「はー。今日は楽しかったねー」

「そうだな」

手を繋いで、無事に帰宅。

…結局、離すチャンスって言うか機会がなくて、帰るまで手ぇ繋ぎっぱなしだったな。

妙に汗ばんでる気がするんだけど…俺の気の所為か。

寿々花さんが楽しそうで何より。

…。

…って。

俺という奴は、何「今日は良い日だったなー」感を出して、一日を終えようとしてるんだ。

ちょっと待て。まだ終わってない。

自宅に帰って、自分の部屋に帰って初めて気がついた。と言うか思い出した。

まだ大事なことが残っていた。

そう。寿々花さんへのクリスマスプレゼントである。

そのクリスマスプレゼントの紙袋が、自室のタンスの前に置きっぱなしだった。

そうだよ。これを渡さないことに、まだ今日という一日は終わらないんだった。

…やべぇ。どうしよう。

完全に渡すタイミングを逸している。

どうする?…いっそ野生のサンタが現れたことにして、今夜寿々花さんの枕元にこっそり置いておくか?

いや待て。それでもし、部屋に侵入したタイミングで寿々花さんが目を覚ましたら?

言い逃れの出来ない夜這いじゃん。

いや待て。あの寿々花さんだぞ?俺が初めてこの家にやって来た時も、ぐーすか寝てたような人だぞ?

起きないって。多分。

いや待て。でもそういう時に限って、タイミング悪く起きたりするんだよ。

それに、寿々花さんは良くも悪くもサンタクロースを信じてないし。

そもそも、今夜仕込んだとして、気づくのは明日だろ?

クリスマスの翌日にクリスマスプレゼントって。遅くね?

誕生日の翌日に誕生日プレゼントもらうようなもんじゃん。

やっぱり今日中に、いや待て。やっぱり寝室に置いて。いや待て。

などと、何回も頭の中で「待て」を繰り返していたせいだろう。

「悠理くーん。入るねー」

俺は、部屋に寿々花さんが入ってきたことに気づかなかった。