アンハッピー・ウエディング〜後編〜

寿々花さんに誘われるままに、人混みの方に向かってみると。

「わー。わー。見て見て、悠理君」

「おぉ…凄いな」

人がたくさん集まっていた理由は、これか。

広場のような場所に、巨大なクリスマスツリーが立っていた。

皆、これを見に来てるんだな。

ツリーの前で写真を撮ってる人がたくさん。

凄いな。我が家のクリスマスツリーも大概大きいと思ってたけど。

うちのツリーの何倍だ?これ。

「凄いねー。綺麗だね」

これには、寿々花さんも大興奮。

本当光り物好きだな、あんた。前世、カラスか何か?

「見てて良い?ここでツリー見てても良い?」

「良いよ、思う存分どうぞ」

寿々花さん、クリスマスツリー大好きだからな。

好きなだけ、心ゆくまで見ていくと良い。

きっと、このクリスマスツリーが飾られているのは、今日までなんだろうから。

「ありがとう、悠理君はやっぱり優しいね」

「別に…。このくらいは普通だろ」

「昨日もね、バレエの劇場のところに、おっきいクリスマスツリーが飾ってあって、しばらく見てたかったんだけど」

と、寿々花さんは昨日のことを教えてくれた。

何だと?円城寺ともクリスマスツリーを見たのか。

「もうすぐ公演が始まるからって、連れ戻されちゃって…」

「…あの円城寺の奴…」

別に良いだろ、クリスマスツリーを眺めるくらい。

何で駄目なんだよ。ケチ臭い奴め。

寿々花さんはツリーが好きなんだから、好きなだけ見させてやってくれよ。

「そんなもの見るのは子供だけだ、って怒られちゃった」

「…」

ちょっとあいつ、ここに連れてきてみろ。

一発拳骨食らわせてやる。

「でも、悠理君は付き合ってくれるんだね。ありがとう」

「子供でも大人でも、好きならクリスマスツリーくらい見るだろ。円城寺の言うことなんて気にするなよ」

好きなものを好きなだけ見てたいと思うのは、誰だって当然のことだろう。

「大人だって、電車が好きな奴はいつまでも駅に立って電車を見るし、絵が好きな奴はいつまでも美術館に通って絵を見るだろ。それと同じだ。子供も大人も関係ない」

「…そうかな?悠理君もそう?好きなものならいつまでも見てられる?」

「俺も?…うん、まぁ…そうだな」

誰でもそうなんじゃね?好きなものなら、そう簡単には飽きないだろ。

「悠理君の好きなものって、何?」

…えっ。

予想外の質問が来て困った。

「悠理君は、何ならいつまででも眺めていられるの?」

「えぇ…っと、俺…?そうだな…」

いつまで眺めてても飽きない…好きなもの…。

…。

…。

…長考。

すると寿々花さんは、俺の無言を勘違いしたらしく。

「…悠理君、何も思いつかないみたい。やっぱり私が変なんだ…」

「ちょ、待て。違う。あんたは普通だよ」

「でも、悠理君はずっと見ていられるものってないんでしょ?」

ない?…いや、ないってことはないよ。

ちゃんとあるよ。飽きずにずっと見ていられるもの…。…そうだな。