アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「わーい。どれも美味しそう〜」 

寿々花さんは、早速大きなお皿を手にスイーツを取りに行った。

やる気満々と言ったところか。

気持ちは分かるが。

「あ、こら…。浮かれてたくさん取り過ぎるんじゃないぞ」

自分の食べきれる量だけを取る。ビュッフェの基本だぞ。

…とはいえ。

この美味しそうなスイーツの山を見ていると、寿々花さんじゃないけど。

つい浮かれて、あれもこれも、と取り過ぎてしまいそうになる気持ちも分かる。

とりあえず、全種類一個ずつ食べてみたいんだけど。イケるか?食べられるか…?

どれもおいしそうだから、どれも食べてみたい。

ショートケーキ、チーズケーキ、チョコケーキ。ティラミスにプリン、ミルフィーユやシュークリーム。

とにかく色んな種類のお菓子が、それはもうたくさんあった。

「あ、見て見て、悠理君。チョコの噴水だよ」

はしゃいだ声の寿々花さんが、ビュッフェの一角を指差した。

チョコの噴水って何だ、と思ったら。

本当に、それはチョコの噴水としか言いようがなかった。

「すげー…。チョコフォンデュって奴か…」

これが。噂の。

初めて見た。

とくとくと噴水のようにチョコが噴き出し、そこに人がたくさん群がって。

マシュマロや、小さく切ったフルーツなどをチョコにつけている。

贅沢の極み。

こんな贅沢に慣れたら、人間が駄目になるぞ。

なんて考えてしまうから、俺は貧乏性なのだ。

「あ、見て。あっちはアイスクリームだー」

寿々花さんの視線の先には、これまたたくさんの種類のアイスクリームが並んだカウンター。

アイスクリーム屋さんみたいに、お客さんが注文すると、レストランのウェイターさんがアイスをカップに取ってくれるらしい。

アイスクリームだけで、この品揃え。

「美味しそうだねー」

アイスクリームが好きな寿々花さんにとっては、垂涎モノである。

「アイス、もらってきても良い?」

「良いけど、今は冬だからな。アイス食べ過ぎると寒くな、」

「わーい。アイス〜」

こら。話を聞けって。

駄目だ。大好物を前に、我を失ってしまっている。

「アイスください。こっちからあっちまで全部ください」

「ぜ、全部ですか?」

人生で一度はやってみたい、大人買いみたいな注文の仕方してる。

レストランの人、困ってんじゃねぇか。

あぁ…恥ずかしいから、もう他人の振りしておこう…。

しかしあろうことか、寿々花さんはこちらをくるりと振り向き。

「あっちの悠理君にも、同じのください」

おい。何勝手に注文してるんだ。

他人の振りしようと思ったのに、完全にツレだってバレた。どころか、俺も同じ変人だと思われてるに違いない。

つーか、俺はそんなにアイスクリーム食べないって。

…それなのに。

「はい、悠理君。どーぞ」

「…どうも…」

満面の笑みで、たっぷりとアイスクリームが盛られたカップを差し出してくる寿々花さんを見ていると。

小言の一つも出てこなくなるのだから、全くこの人はズルいよ。

…とりあえず、飲み物はホットにしよう。