アンハッピー・ウエディング〜後編〜

バスと電車を乗り継いで。

椿姫お嬢様が食事券をくれた、ビュッフェレストランがあるホテルに到着した。

超立派な高級ホテルだよ。

普通に宿泊しようと思ったら、きっと目玉が飛び出る宿泊料なんだろうな。

なんてことをすぐに考えてしまう当たり、俺は根っからの貧乏人だってことなんだろうなぁ。

クリスマスというだけあって、人が多いこと多いこと。

「折角なら、雪でも降れば良かったのにな…」 

曇天の空を見上げて、俺はそう呟いた。

本日のお天気は、生憎の曇り空だよ。

雨の予定も雪の予定もない。今日はこのまま、夜までずっと曇りなんだって。

だったらいっそ、雲一つない晴天…だったら、むしろ清々しかったんだろうに。

曇り空って。

中途半端が一番良くない。

しかし、寿々花さんは。

「ふぇ?何で?雪が降ったら寒いよ?」

「え?いや…ホワイトクリスマスになるだろ?」

「ほわいと…?」

「…」

全然分かってらっしゃらない。ムードってものがあるだろ。クリスマスムードってものが。

ホワイトクリスマス知らないのかよ。

分かってねぇなぁ…。まぁ良いか。分かってようと分かっていまいと、天気が変えられる訳じゃないし。

いかにも寿々花さんらしくてOKってことで。

「何でもないよ。さぁ、入ろう」

「うん。もうお腹空いちゃったよー」

はやっ…。

もうちょっとの我慢だ。もうすぐ思いっきり食べられるよ。

…それにしても、こんなお洒落なお店に来るのは勿論のこと。

まともにビュッフェスタイルのレストランに来るのなんて、いつ以来だろうか。

俺にとってビュッフェと言えば、旅行中のホテルの朝食バイキングなんだよな。

ホテルの朝食バイキングのクロワッサンって、何であんなに美味しいんだろうな。

あんなの滅多に食べられるものじゃないぞ。

…と思ったけど、そういや、ハムスターランド旅行に行った時、ビュッフェ食べた記憶がある。

割と最近じゃないか。

だが…。

「わー。見て見て、すっごい美味しそうだね」

「…本当だな…」

さすがの俺も、スイーツビュッフェは今日が初めてだぞ。

きらびやかなレストランに入ると。

それはそれはもう、お洒落なスイーツが何種類も、たくさんのお皿に盛られて整然と並んでいた。

…壮観、としか言いようのない眺めだな。

是非ともここに、乙無を連れてきてやりたかったものだ。

あいつなら、ここのスイーツを総なめ出来ただろうに。