唐突に、ピンポーン、と我が家のインターホンが鳴った。

ちょ、今このタイミングで来客だと?

なんて間の悪い奴がいたもんだ。

一体誰だよ。今手が離せないってときに…。

すると。

「もしもーし。星見の兄さーん!いるー!?」

玄関の外から、叫ぶ声が聞こえてきた。

もしかしなくても、この声は雛堂である。

やっぱりあいつか。本当タイミングの悪い奴だよ。

ちょっと、今出られないんだって。お取り込み中で。

「おーい。おーい星見の兄さーん!」

叫びながら、ピンポンピンポンピンポン、とインターホン連打。

やめろって、馬鹿。聞こえるっつーの。近所迷惑だろ。

すると唐突に、インターホン連打が止まった。

…諦めたのか?

やれやれ、と思ったのも束の間。

「あ、なーんだ居るじゃん。居留守使っ…。あっ…」

あろうことか雛堂は、勝手に庭に入ってきて、リビングに繋がるベランダの窓から顔を覗かせた。

そして、俺の姿を見るなり、身体を硬直させた。

それもそのはず。

俺は今丁度、リビングのソファに座った寿々花さんの服を脱がそうとしてるところだった。

…このときの、雛堂の顔。

乙無にも見せてやりたかったなぁ…なんて。

何処か他人事のように考えた。

…これ、どうやって言い逃れすれば良いんだ?

「悠理君、早く脱がせてよー。腕痛いよ」

俺に服を引っ張られながら、もぞもぞ、と動く寿々花お嬢さん。

ちょっと黙っててくれるか。俺、今必死に言い訳を考えてるところなんだ。

「…あのな、雛堂。誤解するんじゃないぞ。これはうちのアホな寿々花お嬢さんが、勝手に、」

「…いや、良いんだ星見の兄さん。自分が悪かった」

スッ、と雛堂は手を前に出して俺の言葉を遮った。

「悪いね、お楽しみ中のところ。邪魔者の自分は尻尾巻いて帰るわ。…やれやれ、全く昼間っからお盛んなこったぜ」

「ちょっと待て雛堂!違う!誤解すんなって!」

「悠理君早くー。もう待ち切れないよ」

「あんたはちょっと黙っててくれ!」

このまま誤解を解かずに帰らせる訳にはいかない。

俺は、踵を返して帰ろうとする雛堂を、全力で引き留めた。

お使いのときの乙無と言い、今回の雛堂と言い。

俺は、この夏休みの間で、友人達におかしな方向で誤解されまくってる気がする。

それもこれも、俺のせいじゃないぞ。全部この、寿々花お嬢さんが元凶なんだからな。