アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「何でも良いぞ。…何なら、クリスマスパーティーでも開いてやろうか?」

ハロウィンパーティーに引き続き、今度はクリスマスとは。

それで寿々花さんが、心からの笑顔を取り戻してくれるなら何でも良い。

「そんな…。別に、おねだりしたくてこんな話をした訳じゃないよ」

「そうか?でも、俺はすっかりその気になってるから、遠慮なく言ってくれ」

「…えぇっと…」

寿々花さんはしばし、また視線をぐるぐると彷徨わせて、腕組みをして考え…。

…そして、ハッと何かに気づいた。

お。何か思いついたようだな。

言ってもらうぞ。嫌でも言ってもらう。

「何だ?」

「え、いや、でもこれは…。…あんまり我儘だから」

「遠慮するな。あんたの我儘は、大抵我儘のうちに入らない」

一緒にホラー映画観よー、とか言われる方がよっぽど我儘だよ。

あんたはお嬢様なんだから、自分の要求くらい遠慮せずに言えば良いんだよ。

「言ってみろ」

「…言わなきゃ駄目?」

「あぁ、駄目だ」

これ、強制だからな。

「言わなかったらどうなるの?」

何だと?

言わなかったら…そうだな。

「言うまでくすぐる」
 
「えっ…。…じゃあやっぱり黙っておこうかな…」

ほう?そんなにくすぐられたいか。

ならば、お望み通り。

こちょこちょ。

「ふひゃ。ふひゃあははは!ひゅ、ひゅーりくん、それいりょうはらめ、」

「やめて欲しかったら、観念して言え」

「ふにゃぁぁ!言う、言うからやめれ〜っ!」

よし。じゃあやめてやる。

ただし、だんまりするならもう一回だ。

「で、何が良いんだ?俺は何したら良い?」

「ゆ、悠理君って、たまに意地悪だよね…?」

「…またくすぐられたいのか?」

「違う、違う違う!言うから」

じゃあ言え。はい、今すぐ。どうぞ。

「えっと…あのね、私…ずっと欲しかったものがあるの」

ほう?

「何だよ?…言うだけ言ってみろ」

無月院家のお嬢様が、ずっと欲しがっていたもの…。

何だろう。ブランドモノのバッグとか?絵画とか?宝石とか…?

…しかし、このお嬢様が「その程度のもの」を欲しがるはずがなかった。

「…りー、を」

「何だって?」

もう少し大きな声で。はっきり言ってくれ。

「クリスマスツリーを…おうちに飾りたいなって」

「…」

「ずっと夢だったの…。クリスマスツリー、おうちに飾っても良い…?」

…な?言った通りだろ?

いやに勿体振るから、余程我儘な無理難題を押し付けてくるのかと思いきや。

蓋を開けてみれば…クリスマスツリー、だってよ。

そんなことだろうと思った。