アンハッピー・ウエディング〜後編〜

連絡は、俺の待ち望んでいた相手ではなく。

…雛堂からのメールであった。

「ちっ、またあいつかよ…!」

雛堂に罪がないことは百も承知だが、今だけは舌打ちを禁じ得なかった。

何の用だよ。わざわざメールしてくるくらいなんだから、御大層な用事なんだろうな。

メールを開いてみると。

『件名∶今流行の
本文∶まりとっつぉ。うめぇv(´∀`*v)』

…生クリームで口元を汚し、満面笑みで自撮りした写真が、ついでに添付されていた。

くそっ、ふざけやがって。

あまりの下らなさに、俺は思わず、ソファにスマホをペッ、と投げてしまった。

案の定、くっ…だらねぇことでメールしてきやがって。

マリトッツォじゃねーんだよ。大体、それもう古いだろうが。

流行遅れなんだよ、馬鹿め。

雛堂の奴、こんな調子で俺に下らないメールばっかり寄越すんだったらさ。

もう、メール着信拒否してやろうかな。

全く人の神経を逆撫でしてくる奴だよ。

まぁ、でも考えてみれば当然か。

自宅の電話番号さえ覚束ないのに、俺の携帯の番号なんて、寿々花さんが覚えているはずもなく。

覚えていたとしても、あの人スマホ持ってないんだから、メールを寄越すことは出来ないだろう。

不便だからさ、いい加減スマホくらい買ってくれないかなぁ…。

この際、子供用の安心キッズ携帯とかでも良いからさ…。

「…はぁ…」

俺は、またしても時計を見上げた。

今日だけで何度目か。

それから、窓の外を見つめた。

これも、今日だけで何度目か。

しかし何度時計を見ても、窓の外を見ても。

俺が求めている姿は…寿々花さんの姿は、何処にも見えなかった。

…帰ってくるの、本当に今日だよな?

実は明日です、とかだったら…俺は、二人分の特大オムライスを自棄食いするぞ。

あんな特大のお子様ランチを二人分も食べたら、明日の胃痛は必至。

俺の胃の為にも、精神衛生の為にも。

「…早く帰ってきてくれ…」

そろそろ、待ちくたびれて限界だ。

…よし。

気分転換の為に、コーヒーでも淹れて飲もう。

俺は立ち上がって、キッチンにコーヒーを淹れに向かった。