アンハッピー・ウエディング〜後編〜

しかし残念ながら、無い物ねだりしても仕方ないので。

「イタリア料理と言えば…やっぱりパスタだろ」

と、雛堂。

そう言いたい気持ちは分かるが…。

「…パスタ、ないからな。主食はライ麦パンしかない」

「あっ、そうだった…。畜生、イタリアンを作れっていう指示じゃないのかよ」

そういうことではないらしい。残念だけど。

「じゃあ、パスタの他にイタリアンって言ったら…。…ピザ?」

それも一般的だよな。ピザ…。

すると、他のクラスメイトも。

「良いんじゃないか?ピザなら…。トマトもチーズもあるし」

トマトって言っても白いプチトマトと、おまけにゴルゴンゾーラチーズだけどな。

ゴルゴンゾーラチーズって…ピザに出来んの?

チーズなんだから、多分大丈夫だろう。

カレー味ほどの万能感はないが、トマト味も結構有能だよな。

多少の食材のクセなら、トマトの酸味が誤魔化してくれる。

トマトを潰してトマトソースに、その上にゴルゴンゾーラチーズと、野菜を炒めて乗せたら…。

なんか、ピザっぽくなるような気がしないか?

想像だけで料理を作るのは大変危険な行為である、ということは百も承知だが。

しかし、今はレシピも献立表も何もないんだから、想像で作るしかない。

そう考えると、ピザという案は悪くないかも。

ピザ生地をどうするのかという問題はあるが…。

今こそ、ライ麦パンの出番なのでは?

ほら、食パンだってさ、ピザソースを塗ってチーズを乗せたら、ピザトーストになるだろ?

あれと同じ要領でさ。

ライ麦パンにトマトソースを塗って、食材を乗せて焼いたら…。

…悪くなさそうじゃね?

「ピザか…。でも、このヤギ肉はどうしよう?」

と、クラスメイトが異臭を放つ生のヤギ肉を指差した。

あ、本当だ…。ヤギ肉の問題が解決してなかった。

普通に焼いてピザに乗せれば…と言いたいところだが。

塩胡椒して焼いたくらいじゃ、あの独特な獣臭さが消えるとは思えない。

いかにもクセが強そうだしな…。

…あ、そうだ。じゃあ。

「照り焼きっぽく焼いて、照り焼きピザにしたらどうだろう」

おいおい、イタリアンなのに照り焼き味かよ、って?

うるせぇ。照り焼きピザ美味しいだろうが。

「成程、悪くないかも…」

「ムール貝とキノコはどうする?」

「…一緒に照り焼き味にして、ピザに乗せよう」

2種類作れば良いんだよ。トマトソースのピザと、照り焼きソースのピザの2種類。

トマト味と照り焼き味が、全てを誤魔化して解決してくれるよ。…多分。

紫キャベツとか、カルチョーフィとかいう謎の食材をどうするのかって?

それも全部ピザに乗せよう。大丈夫だ多分。きっと。うん。

イタリアの食材なんだから、ピザに乗せれば何でも合うよ。

ある意味闇鍋…と言うか、闇ピザって感じだが。

悩んでる時間もなさそうだし、他に名案がある訳でもないし。

こうなったら、やるしかない。