アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「…仕方ない。乙無」

「何ですか」

「今こそ、邪神の眷属パワーの使い所だ。偉大な邪神様の有り難い知恵を借りて、このピンチを救ってくれ」

もしこの窮地を救ってくれるなら、俺はあんたを邪神の眷属(笑)だと認めるよ。

「…成功した時、幸福な時は自分の努力のお陰。失敗した時、上手く行かなかった時は神の責任。都合良く神を利用する人間とは、本当に愚かな生き物…」

「まぁまぁ、そう言わず」

「良いですか。神は人を救いません。この状況を作り出したのは神の意志ではなく、人間の意志だからです」

「はいはい、分かる分かる。助けてくれ神様」

「ちっ。全くこれだから人間は…。邪神たるイングレア様を利用しようとは、何とも不遜な生き物です」

うんうん。不遜でも何でも良いよ。

この状況を何とかしてくれるならな。

「真面目な話、何とかならないか。乙無」

今、あんた以上に頼れる存在はいない。

食材について知っているなら、この食材をどのように調理するのが正解なのかも知ってるんじゃないか。

「そう言われても…。僕も料理人じゃありませんからね」

「…乙無でも、さすがに無理か?」

「…意図しているのか知りませんが、ここにあるのはイタリア産の食材が多いので…」

え?

「イタリア料理にしてみたら、合うんじゃないでしょうか?」

「…イタリア料理…」

…何だか、俺にとっては非常にタイムリーな国の料理だな。

「これって、イタリアの食材なのか?」

「全部が全部じゃないですけどね。ルッコラもカルチョーフィも、イタリア料理ではよく使われる食材ですし…。クレソンやエシャロットも、ヨーロッパで一般的な食材です」

…そうなんだ。

「そういや…ゴルゴンゾーラチーズも、イタリアのチーズなんだっけ…」

「えぇ、そういうことです」

ってことは、これは、あの天真爛漫系家庭科教師なりの優しさなのか。

ヨーロッパ(特にイタリア)の食材を中心に用意してやったから。

精々、お洒落なイタリアンでも作れよ、と。そういう優しさなのか?

なんか履き違えてるような気がするけど、そういうのは優しさとは言わないんだよ。

玉ねぎとじゃがいもと人参と牛肉と、カレーのルーを冷蔵庫の中に入れておくこと。それこそ本物の優しさってもんだ。

「…イタリア料理ねぇ…」

今ここに、寿々花さんが居てくれたらなぁ…。

「あんた、今何食べてんの?」って聞けるのに。