アンハッピー・ウエディング〜後編〜

え、えっと…?

…誰?

突然の展開に、頭が追いつかないんだけど?

「…星(ほし)さんがメイドカフェ行ってみたい、って言うから、興味もないのに行列を待たされて、ようやく順番が回ってきたと思ったら、今度は店内でこのトラブルですか。大変迷惑なんですが」

「な、何だ、お前…。手を離せっ!」

金髪チャラ男が、手を振りほどこうとしたが。

一体どんな握力で握っているのか、どれほど強く振りほどこうとしても、同い年くらいの青年の手を離すことは出来なかった。

ただ者じゃないオーラを感じる。

「申し訳ないですが、平和的にお引取り願えませんか?僕はこれから、星さんに付き合って文化祭を回るつもりなので。余計なトラブルを起こされると困るんです」

「な、何を、」

「…それとも、ちょっと痛い目を見た方が良いですか?」

傍から見ている俺でさえ、背中がゾクッとするほどの凄み。

すると、その青年の後ろについていた女子高生風の女の子が。

「あちゃー…。やめた方が良いよー、結月(ゆづき)君を怒らせるのは。結月君の『痛い目』は、本当洒落にならないくらい痛いからね」

と、金髪チャラ男に向かって言った。

その言葉が嘘ではないことは、目の前の状況を見ればよく分かる。

逆らってはいけない相手、というものがいるのだ。

この人に下手に太刀打ちしたら、あっという間に返り討ちに遭って、一生モノのダメージを負いかねない。

これには、金髪チャラ男も真っ青。

更に、そこに追い打ちをかけるように。

「どうでも良いけどさー。これ以上しょうもないことすんの、やめた方が良いんじゃない?」

雛堂だった。

雛堂が、スマホの画面を構えて口を挟んだ。

「さっきまでのやり取り、全部撮ってあるからさ。どっちが悪いか、偉い人に確認してもらおっか?」

雛堂、あんた…それ、いつから撮ってたんだ?

てっきり他のクラスメイトと同じように、及び腰で逃げていたのかと…。

「…まだ何か、言いたいことでも?」

トドメとばかりに、青年に凄まれ。

「ぐっ…。お、覚えとけよっ」

三下みたいな台詞を吐いて、金髪チャラ男は半泣きで逃げていった。

…その、間抜け極まりない背中を見送って。

「…やれやれ」

と、青年が溜め息混じりに呟いた。

…えぇっと、よく判らないけど、これ。

…窮地を脱した、ってことで良いんだよ…な?