アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「…悠理君…」
 
突然間に割って入ってきた俺を見て、寿々花さんが呆然と呟いた。

「…何だよ?お前。何やってんだ?」

チャラ男は眉を釣り上げて、俺を睨んできた。

…本当、何やってんだろうな。自分でも分からないよ。

俺らしくもない。こんな見るからに面倒臭そうなトラブルに、自分から首を突っ込むなんて。

別に、特別腕力が強い訳でもない。ぶん殴られたらあっさり返り討ちに遭うだろうに。

それでも、見ていられなかったんだから仕方ない。

頭で考えるより先に、身体が動くことってあるだろう?…それだ。

まぁ、良いよ別に。

例え、腹いせに俺がボコボコにされようが。

寿々花さんが無傷なら、俺が殴られるくらい何と言うこともない。

良いか、寿々花さん。さっき言った変な奴っていうのは、こういう奴のことを言うんだぞ。

よく肝に銘じておけ。

「つまらないことすんなよ。自分からぶつかりに行ったんだろ?」

「はぁ?なんか証拠でもあるって言うのかよ?」

いや、証拠はないけど…。咄嗟のことだったから。

「話があるなら俺が代わりに聞くから、寿々花さん…その子に手を出すのはやめてくれ」

「お前は関係ないだろ?」

関係ない…って言えたら楽だったんだけどな。

残念ながら、関係大アリなんだよなぁ。

「悪いが、俺も引き下がれないんでね。これ以上絡んでくるなら、俺にも考えがある」

「何だと?この、クソ生意気な…」

あ、やべぇ。キレさせたみたいだ。

でも、さっき言った通り、俺も引き下がれないし…。

周りで見ていたお客さんや、寿々花さんのクラスメイト達が真っ青になっているのが分かった。

皆さん腰が引けて、誰も助け舟を出してくれそうにないので。

じゃあ、やっぱり俺が相手するしかないかな…。

不思議と怖いとか、逃げたいとかは思わなかった。

自分でも驚くほど冷静で、何なら受けて立ってやろうというクソ度胸が、

「調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキ。思い知らせてや、」

と、ブチギレた金髪チャラ男が拳を振り上げた、その時。

思わぬところから、思わぬ人物の助け舟が入った。

「…思い知らせるって何?」

チャラ男が振り上げた拳が、振り下ろされることはなかった。

突如として現れた、俺達と同い年くらいの男性が…チャラ男の拳を握り締めるようにして掴んだからである。