アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「悠理君、これ注文のオムライス」

「あ、うん…」

気を取り直して。

寿々花さんが、お盆の上に乗ったカレーとオムライスを、テーブルの上に置いた。

「それから、こっちが飲み物。メロンソーダはどっち?」

「こっちこっち。自分がメロンソーダで、悠理兄さんはハートのソーダな」

「そっか。悠理君って意外と可愛いもの好きなんだねー」

「…それは誤解だ…」

雛堂に。勝手に注文されたんだよ。

ハートのソーダって何なんだろうと思ったら、ピンク色のソーダの中に、ハート型のラムネみたいなのがいっぱい浮かんでいた。

成程、いかにもメイドカフェ…って感じだな。行ったことないけど。

ストローまでハート模様だし。

小っ恥ずかしい…。

「このオムライス、悠理君が注文したの?」

「え?あぁ、うん…って、雛堂に勝手に注文されたんだけどな」

「悠理君の口には合わないと思うよ。だって、悠理君のオムライスの方がずーっと美味しいから」

とのこと。

…そうなのか?

ケチャップでハートマークが描いてあって、いかにも可愛らしい…お洒落なオムライス、って感じだが。

「そっちのカレーも、悠理君のいつものカレーの方がずっと美味しいよ」

「うわ、本当だ。レトルトの味がする」

早速カレーを一口食べた雛堂が、顔をしかめた。

マジ?それレトルトなのか?

試しに俺も、オムライスに口をつけてみると…。

…成程。

不味くはない。決して不味くはないんだけど…。

…冷凍食品のオムライスの味がする。

てっきり、料理上手な女子生徒が厨房で手ずから作ってるのかと…。

「温めたりお皿に盛り付けたり、果物を切ったり…ドリンクを作るだけで、凄く忙しいみたい。とても一個ずつ作っていられないよ」

と、寿々花さんがキッチン事情を教えてくれた。

そうだったのか。

まぁ…無理もないだろう。いくら人手が多いとはいえ、これだけお客さんがたくさん来てたら。

注文を聞いて回るだけでも、一苦労。

閑古鳥で暇を持て余している『HoShi壱番屋』とは、訳が違うもんな。

「大変だな、寿々花さん…。手伝ってやれるものなら手伝ってやりたいが…」

「えっ。悠理君もメイド服着たいの?」

ちげーよ馬鹿、そういう意味じゃない。

「レンタルしたメイド服、まだまだ更衣室に残ってるよ。サイズもSからLまで…」

「ありがとう。絶対着ないからな」

メイドの手伝いじゃねーよ。厨房の手伝いを、ってこと。

それに、俺も自分の店を放り出してきてるから、残念ながら手伝ってはあげられない。

まぁ、男子部と違って人手は多いんだし、何とかなるだろう。

すると。

「ちょっと、おーい。そこのメイドさん、注文良い?」

別のテーブルから、片手を上げて寿々花さんを呼ぶ声がした。

おっと。呼ばれてるようだぞ。

「呼ばれちゃった。そろそろ行かなきゃ」

「あぁ。忙しいところを引き留めて悪かったな」

「ううん。来てくれてありがとう。ゆっくりしてってねー」

寿々花さんは手を振って、呼ばれた方に向かっていった。

…やれやれだな。