アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「そ、それより…寿々花さん」

「なーに?」

「朝からここで働いてるのか?変な奴に絡まれたりしてないだろうな…?」

「変な奴?って誰のこと?」

いや、それは、だから。

変な奴と言ったら…変な奴だよ。

「男共にじろじろ見られたりとか…」

「さっき、悠理君にじろじろ見られたよ」

変な奴は俺でした。どうも申し訳ありませんでした。

って、そうじゃなくて。

「俺以外の男に、だよ。注文聞く以外で声をかけられたり…名刺とか渡されたり…」

「?そういえば…何人かの人から、電話番号とメールアドレスのメモを渡されたな」

何だと?

それは聞き捨てならん。断じて聞き捨てならないぞ。

「それ、何処にやった?ちょっと見せてみろ」

「えぇっと、確かポケットに…あれ?何処に入れたかなー」

ごそごそ、とポケットを探る寿々花さん。

今のところ、寿々花さんには全くその気がなさそうで安心したが。

しかし、やっぱり寿々花さんに声をかける不逞の輩がいたんだな。

油断も隙もあったもんじゃない。

「あ、あった。ほら、3枚」

「ちょっと貸してみろ」

俺は寿々花さんの手から、メモを引ったくった。

そこには走り書きで、名前と電話番号、メールアドレスが記載されていた。

こんなものでナンパを仕掛けようとは、片腹痛い。

これは俺が厳重に保管し、家に持って帰って全部ビリビリに破いて、そして生ゴミ入れにぶち込んでやる。

ざまぁ。

「他にもこういうのもらったら、後で全部俺に渡すんだよ。良いか、決して話に乗るんじゃないぞ」

「ふぇ?何で?」

「い、い、か、ら。俺の言った通りにしてくれ」

「うん、分かったー」

…本当に分かったんだろうな?

心配だが、一応釘を差しておいたので、ひとまずは安心だろう。