アンハッピー・ウエディング〜後編〜

何とも落ち着かない気分で、忙しなく周囲をきょろきょろと見渡しながら、俺は席に座っていた。

傍目から見ると、相当怪しい奴に映ったに違いないが。

俺は何も、メイド服姿の女子生徒達を眺めていたのではない。

ただ単に、寿々花さんの姿を探していただけだ。

その他なんて所詮のっぺらぼうだから。顔、見えてねぇから。

「悠理兄さん…。挙動不審だなぁ…」

雛堂が何を言っても耳に入らない。

今なら、俺に対するどんな悪口を言われたとしても、全く聞こえていないと思う。

すると。

「ご主人様、メニューはお決まりですか?」

さっきのウェーブ髪のメイドさんが、俺達のテーブルにやって来た。

…え?メニューだって?

全然考えてなかった。

「あ、さーせん。今決めます」

俺の代わりに、雛堂が答えた。

「兄さん、注文何にする?」

「…どうでも良いけど…何があるんだ?」

「メニュー表はこちらになります」

メイドさんが、お洒落なメニュー表を手渡してくれた。

俺達の『HoShi壱番屋』では、手書きのメニュー表だったが。

こちらのメイドカフェのメニュー表は、ちゃんとパソコンで作ったものらしく。

非常に本格的で、いかにも「それっぽい」出来。

普通の、ファミレスのメニュー表みたいな完成度。

メニュー表だけで、この気合いの入り方…。さすが、格の違いを感じるな。

「やっぱりオムライスと…あっ、カレーもあんぞ。悠理兄さん、どれにする?」

「ふーん…。…水で良いよ」

「マジで不機嫌だな…。よし、じゃあ自分は、この特製カレーとメロンソーダ、こっちの不機嫌面の兄さんには、オムライスとハートいっぱいピンクのキラキラソーダを頼むよ」

水で良いって言ったのに、雛堂が勝手に俺の分まで注文を決めてしまった。

オムライスはともかく、ハートいっぱいピンクのキラキラソーダ、って何だよ?

小っ恥ずかしい注文やめろ。

「畏まりましたー。少々お待ち下さい」

にっこりと微笑んで、ウェーブ髪のメイドさんがキッチンに引っ込んでいった。

あぁ…。水で良いって言ったのに。

「何勝手に決めてんだよ…。…つーか、自分の教室であれだけカレー作ってんのに、ここでもカレー頼むのかよ?」

「え?良いじゃん。うちの『HoShi壱番屋』自慢のシェフのこだわりカレーとどっちが美味しいか、試食してみようと思って」

やめとけって。負けてたらショックだろ。

料理上手な女子生徒達が作るカレーなのだ。俺のカレーくらいじゃあ、手も足も出んだろ。

注文したメニューが届くのを、しばし待っていると。

「お待たせしましたー。カレーとオムライスお待ち…あれ?」

「え?」

突然、聞き覚えのある声がすると思って振り向くと。

「…悠理君だー」

「…!す、寿々花さん…!」

注文したメニューをお盆に乗せた寿々花さんが、そこに立っていた。

あまりにもいきなり現れるもんだから、心臓止まるかと思ったよ。